顧客の課題に向き合うこととは
電通が発表した「2015年日本の広告費」によると、近年のインターネット広告の進展・拡大は顕著となっており、現在ではテレビの次に大きな媒体と言える。
多様化するコミュニケーション戦略
新聞・雑誌・ラジオの広告は減少を続け、今では「4マス広告」という呼び方が適切かどうかも、疑わしいところである。
現在の印刷業界を取り巻く環境においても、これらの影響が年々大きくなっている。
一般企業や自治体、教育機関、さまざまな団体などの情報発信手段が印刷物だけということは、ほとんど皆無に近い状況となった。そして、Webやモバイルと印刷メディアを使ったクロスメディアコミュニケーションが、ごく日常的に行われている。印刷メディアの優先度が2番手、3番手であることも少なくないのが現実である。
印刷メディアの要素を改めて考えると、文字と画像による表現である。Webやモバイル等のデジタルメディアの要素の大半は文字と画像であり、さらに付け加えられるものが動画や音声である。
デジタルかアナログか、データ製作なのかモノづくりなのか、という対立構造として捉えることは、入り口を狭めるだけである。
むしろ、その要素はほとんど重なっていることを冷静に受け止めるべきだろう。
一般企業や団体が情報やメッセージを発信する手段として、Webやモバイルと印刷メディアを使ったコミュニケーションが重要なことは明らかである。そして、その要素が印刷の延長上に含まれていることも歴然とした事実である。
受注依存型組織からの脱却
従来の印刷企業は、典型的な受注産業であった。顧客から課題を与えられ、それを解決することで顧客の信頼を勝ち得てきた。
しかし、受注依存型の組織では、このようなビジネスに柔軟に対応することはできない。
顧客の課題に向き合い、解決するためのコミュニケーション戦略を構築する能力、論理的な提案能力が必要である。
そのような能力を学習する手段として、JAGATはカリキュラムを体系化し、クロスメディアエキスパート試験を実施してきた。本試験のメインである第2部記述試験問題は、限られた時間の中で与件文を読み、顧客のコミュニケーション戦略に関する提案書を作成する。
提案書の採点では、「様式」「内容」に加え、「論理性」が重要視される。顧客の課題に向き合い、それを解決するという内容となっているかどうか、期待した効果が見込めるのかなど、説得力のある提案が求められている。
(JAGAT CS部 千葉 弘幸)