産業連関表から読み解く印刷産業の需給構造

掲載日:2016年11月8日

100億円の印刷需要が発生した場合、印刷市場に約106億円の印刷需要を誘発し、国内経済に約190億円の経済波及効果をもたらす。『印刷白書2016』では産業連関表によって印刷需要や様々な産業との関係を見ている。(数字で読み解く印刷産業2016その12)

「印刷白書」で産業連関表をなぜ取り上げるか

JAGAT刊『印刷白書』では印刷産業に関連するデータを網羅し、2010年版からは産業連関表を取り上げている。印刷産業と他の産業の取引や、印刷物・サービスの流れを読み取ることで、日本国内の印刷需要や、その波及効果などを見てみたいからである。
産業連関表は全産業の取引が一覧できるように構成されているが、数字の羅列でとっつきが悪い部分もある。そこで11月4日に実施された『印刷白書2016』発刊記念特別セミナーでは、重要ポイントに絞って解説を行い、数字のウラを探ってみたいと考えた。以下にセミナー資料の一部を紹介したい。

55部門表で印刷産業の取引を見てみよう

印刷産業の生産にどれだけのモノ、サービス、ヒトが投入されているか。また印刷産業の生産が国内の他産業へ及ぼす影響はどうだろうか。そのような疑問を解消するカギが「産業連関表」にある。

『印刷白書2016』では経済産業省「平成25年延長産業連関表」から印刷産業の需給構造を見ている。

産業連関表は、縦に見ると商品の費用構成が、横に見ると商品の販売先がわかる。印刷産業の生産額4.96兆円は、財1.45兆円とサービス1.03兆円に付加価値2.48兆円が加わったもので、製造業に1.03兆円、サービス産業に3.91兆円販売されている。

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これをさらに詳しく見るために、経済産業省の延長表54部門と98部門を組み替えて、印刷産業の数字がわかる55部門表を作成し、印刷物作成の費用に着目してまとめたのが下図である。
中間投入率と粗付加価値率は足すと100%になる。中間投入率は一般的に製造業では高く、サービス業では低いが、印刷産業は中間投入率50%、粗付加価値率50%となっている。

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印刷産業の販売先に着目してまとめたものが次の図である。印刷産業の得意先産業は、その他の情報通信(出版、新聞など)が2011年まで長年1位を占めてきたが、2012年に金融・保険・不動産に逆転された。その内訳は金融、生命保険、損害保険がすべて上昇していることから、金融・保険商品の多様化が寄与しているようだ。

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経済波及効果は、逆行列係数×新規需要額で算出されるもので、仮に印刷産業に100億円の新規需要があった場合、印刷市場に106億円、国内経済に189.5億円の経済波及効果をもたらす。

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産業連関表は産業構造をはじめ生産波及など、産業に関する情報の宝庫である。印刷白書では図表を中心にわかりやすくまとめている。印刷産業の数字がわかる55部門表はJAGATが独自に作成したものである。詳細は『印刷白書2016』の産業連関表「すべての産業とともに歩む印刷産業」を参照いただきたい。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)