印刷会社が利益を確保していくためには、社内コストが換算しづらい制作現場のマネジメントをどのように行っていくかが課題である。
メディア環境の変化や価格競争の激化によって印刷市場が縮小する中、収益性重視の経営を目指す企業が増えている。
収益を確保するためには、できるだけ正確に原価を把握し、緊密に収支管理を行って付加価値の部分を高める必要がある。
原価を考える場合、印刷部分は算出しやすいが、制作部門は個人の能力・経験によって作業時間が変動しやすいという問題がある。
例えばデザイン作業に要する時間を考えた場合、同じ仕様の仕事を残業して遅くまでやる人と短時間で終わらせる人では、コストのかかり方に相違が出る。
このため出来るだけコストを押さえ、デザイン料金から一定の利益を出そうとしても難しいのが現状である。
収益性改善のための手段として、工程管理を通して作業ごとに目安となる所要時間を設定し、作業にかかるコストを定量化するという方法がある。
個人差によって異なる作業時間や作業自体の難易度、仕様など諸条件を逐一洗い出し、データを分析して作業ごとに基準コストを設定するのである。基準をつくることによって、同じ仕様、同じ種類の制作物であれば、デザイン担当者が誰であろうと、つねに一定の加工高を見積もることが出来るようになる。
コストの定量化によって、デザイン料金の根拠を論理的に説明できるようになれば、顧客に対する価格交渉も容易になるという側面もある。一部の企業では、こうした工程管理を徹底することによって、制作部門全体の収益性向上を実現している。
さらに、こうした現場でのマネジメントをスムーズに進めるためには、現状を把握するだけでなく、個々の作業情報を組織内で共有することや、個人のスキルの平準化を促す取り組みが必要になり、制作現場全体の活性化にもつながるはずである。
■関連情報
制作現場の収益改善マネジメント講座
2017年1月25日(水)