JAGAT大会2016では、特別講演として株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長CEO、株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長の藤原洋氏に、「インターネットが創り出す21世紀の経済力学-勝ち抜くための処方箋」のタイトルで、これからの日本がいかにしてイノベーションを起こしていくか、その処方箋となるヒントについて講演いただいた。
講演では、まず1994年のインターネット商用化から20年後の2014年までに、同氏と付き合いのある国10カ国(アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、中国、韓国、オーストリア、ハンガリー、イスラエル、スウェーデン)と日本を比較して、日本だけがGDPが減少したことを指摘し、失われた20年とは日本のGDPの減少が象徴するとした。日本は抜本的に世界を変えたインターネットの衝撃に気付かずに過ごした20年であり、第3次産業革命ともいえるこのデジタル革命にきちんと対応できたのは日本では情報通信産業だけあり、インターネットの利活用に十分に対応できなかったことがGDPの成長できなかった原因の一つであるとした。
実際、日本のインターネットの普及率を見ると先に挙げた国とそん色なく、インフラ面では劣っているわけではない。ところが、利活用率となると他国に遅れをとっていると藤原氏は指摘している。例として公共分野のインターネット利活用についての現状を行政、医療、教育でサンプリングして他国と比較して紹介した。
印刷業界にすれば、デジタル化社会に対応してきたという自負がある。DTPの登場以降で劇的にワークフローは変わったし、インターネットを活用して原稿の入稿から、データの制作、校正のやり取りなど、さらにWeb to Printを使っての入稿システムや、印刷通販のようなビジネスモデルも登場して決して対応できていなかったとは思えないだろう。
しかし、印刷業界のことを顧みると、自分たちの制作環境の効率化や改善にはデジタル化やインターネットを活用してきたが、それでは顧客ビジネスの実現のために、きちんとデジタル化やインターネットを活用できているかということである。先進的な印刷会社ではその重要性に気づき、やっとこの数年で取り組みの成果が出始めているところであり、まだまだ顧客視点のICT活用はこれからといったところかもしれない。そして、そこにこそ新たなビジネス市場が広がっているのかもしれない。
藤原氏はICTの利活用こそが失われた20年を打破するための処方箋であるとし、アベノミクスによる成長戦略を解説しながら、新産業を創生するIoT社会の実現こそが1億総活躍社会の実現につながるという。インターネット革命は次なるステージへ突入しており、IoT、ビッグデータ、AIというイノベーションが、これからのビジネスの成長、ひいては日本経済の成長を実現するカギであり、不可欠な要素になるという。では、この3つのイノベーションとはどのようなことか? 続きはJAGAT info11月号のJAGAT大会2016特別講演報告記事をご覧いただきたい。
このほか11月では、page2017のテーマ「ビジネスを創る~市場の創出~」を取り上げ、page2017でJAGATが目指すものを紹介している。経営者インタビューは、中小企業の経営者にとっては感性を高めて勉強し続けることが重要だと語る株式会社白橋の代表取締役社長白橋明夫氏にお話をうかがった。
(JAGAT info編集担当)
2016年11月号目次はこちら