初日の基調講演1でのホップに続いて、2017年2月9日はステップとしていかにITを活用してOne to oneマーケティングを実用化するか!について、10日はジャンプとしてパーソナライズをビジネスとして如何に実現するか?!について深く議論する。page2017はホップステップジャンプマーケティングなのだ。
初日のロン・ジェイコブス氏による講演は大変貴重なものである。時間を作っても聞く価値は十分ある。その基調講演1に続くのが基調講演2「デジタルとアナログの最適解〜マーケティングオートメーションと印刷ビジネスの関係」である。
インターネットの台頭により印刷以外はTVやラジオだけだったメディアが大きく拡がり、じっくり読むのが紙ではなくインターネットが第一に来るという世界が広まってしまった。研究論文などがこの世界で、辞書類も電子辞書に置き換えられるだけか?と思いきや、ネットで検索することで電子辞書も不要化してしまうという世界が拡がっている。
所有という概念が薄れ、CDでも、ダウンロードして曲をファイルとして所有もせずに、聴きたいときにサーバーにアクセスして聞くというこれまた信じられない世界になっている。もちろんファイルの所有も無しということだ。このようなことが当たり前になるとTVの将来も危ういかもしれないと思ってしまう。私はなんだかんだ言いながら、「ながらTVは無くならない」と堅く信じていたのだが、ながらという行為自体が過去の遺物なのかもしれない。
そういう世界に「マーケティング理論をどのように役立てるか?」ということなのだが、インターネットの進歩はとどまることを知らず、個人の世界に奥深く入り込んでしまった。
先ほど音楽の話をしたが、音楽どころか、ビデオ・映画の世界がインターネットの世界になってしまい、趣味や嗜好の情報をIT関係の人間が相当量蓄積しているのだ。ビデオというと「?」の趣味と勘違いされるが、私はいわゆる鉄っチャンで鉄道や飛行機、車が好きなのだが、この手のビデオだったら欲しいものがたくさんある。
また、そういう人には独特の受けポイントがあり、例えば尾久車両センター(田端と上中里の間に拡がる車庫)の見学会の案内が来れば、ものすごい確率で申し込むと思う(ビデオも魅力的)。そのイベントがタモリクラブとのコラボだったら魅力は百倍増だろう。もちろん黒沢映画ファンやホームズファンならその深さは日本海溝のごとくである。
インターネットはマーケティングの世界も変えてしまった。個にリーチ出来ることで、日々変わる顧客の嗜好を深くタイムリーにキャッチできるのだ。だからデジタルマーケティングは現代社会にマッチするように古典的なマーケティングから大きく変わった。そしてこのような世界にマッチするように印刷メディアの役目も大きく変わってきているのだ。
少し前なら撒き餌のごとく広く浅い情報をばらまいて、ほとんどが捨てられることを覚悟していたが、デジタルマーケティングが当たり前になってくると、個としてのターゲットに深く刺さることを目的とする一本釣り的なマーケティング手法に印刷は向いている。例えばリード(マーケティングで言う見込み客のこと)を優良顧客に育てるリードナーチャリングには印刷が強力なツールになると言われている。
このようにITの力を使って最適な顧客にタイムリーにリーチ、もしくは可能性のある顧客の可能性をより高めることに印刷メディアを使うという方法について大手マーケティングオートメーションベンダーのオラクル、中堅マーケティングオートメーションベンダーとしてシェアを伸ばしているマルケト、実際に印刷業界からどう印刷をマーケティングオートメーションとリンクさせるかをサポートするグーフの井戸会長(不二印刷社長でもある)を招き、博報堂プロダクツの大木氏にモデレーターをお願いし、どのように印刷メディアをMAとリンクさせていくかを考える。
ジャンプは三日目の基調講演3「印刷の新たな挑戦~クロスチャネルとパーソナライズを考える」だ。このセッションこそ「印刷会社は具体的にどうするんだ?」の解であり、「このようにパーソナライズしていく」という解を持った方々に登場いただく。
博報堂DYメディアパートナーズの澤村氏と福島印刷の堺氏はパーソナライズにノウハウを持つ福島印刷とパーソナライズされた印刷物をどのように活用するのかのノウハウを持つ博報堂DYメディアパートナーズがコラボして印刷メディアを活用して実績を残している。
また、トッパン・フォームズがパーソナライズとその活用方法で多くの実績を持つのは有名なことである。そして中堅の経営者がこれからの印刷業をどのように変革し、挑戦していくのか?研文社の網野社長と東洋美術印刷の山本社長に大いに語っていただく。
モデレーターとしての私の役目は限られた時間内にどれだけ核心を引き出すかということだが、パーソナライズを小ロットと考えるのか、完璧にOne to oneと考えるのか、そしてインターネットや電子書籍、デジタルサイネージとどのように結びつけば良いのか?も大事なポイントである。
これからの印刷ビジネスはデジタルメディアと有機的に結びつけてこそ、その価値を高めていくのは間違いがないということも忘れてはいけないポイントだ。
(JAGAT専務理事 郡司秀明)