【第19期与件:動物病院】クロスメディアエキスパート第2部試験
状況設定について
あなたは、首都圏にある中堅総合印刷会社のX社に勤務するクロスメディアエキスパートである。X社は、商業印刷物やDVD-ROMの制作、Webサイトの構築・運用などのサービスを顧客企業に提供している。X社にはデザイン専門の系列子会社があり、グループ総従業員数は100名である。
A社提案プロジェクトについて
動物病院を運営するA社は、X社が過去に取引を行った顧客企業である。X社は、同社Webサイトの一部を手がけた実績もある。営業担当者より、「A社は、顧客との新しいコミュニケーション戦略の検討をしている。」との報告があった。
X社は、営業部門や企画部門、制作部門に所属する数名で、A社提案プロジェクトを立ち上げた。
クロスメディアエキスパートであるあなたは、本プロジェクトのリーダーに任命された。
X社は、本プロジェクトにて提案書を作成し、2015年3月16日にA社へ提出する予定である。
面談ヒアリングについて
A社について調査をすすめていった結果、X社の競合企業がインターネットやモバイル端末を活用した提案を行う準備をしているとの情報が入った。
X社は、営業担当者が中心となり、社長と販促担当者に面談ヒアリング(※面談ヒアリング報告書参照)を実施した。A社は、コミュニケーション戦略を立案するにあたり、社外からの優れた提案を取り入れ、実施を検討する方針である。
A社面談ヒアリング報告書
概要: A社からの提案依頼に伴う、ヒアリング調査
日時 :2015年3月10日 10時~12時
対応者: 山咲社長、鈴木経営企画室長
内容: 下記に記載
1.提案へ向けて
A社は動物病院の運営を中心にサービス業や小売業を営み、埼玉県内の郊外を中心に展開している。事業所は本部と支部で、大別すると3拠点で運営されている。
創業当時から、ペットだけでなく飼い主に対する心遣いが支持され、業績は順調に推移していた。しかしながら創業10年を過ぎた頃、施設の近隣に大型ショッピングモールができ、大手企業の資本による動物病院が進出してきた。その頃から、主要顧客層が他の病院に流出する事象もあり、業績の伸びが鈍化する傾向となった。
A社はさらなる業績の向上を目指し、サービス内容の見直しや様々な取り組みを行い、顧客にさまざまなサービスを横断的に利用してもらう活動を実施している。
A社の理念を共有できる獣医をはじめとするスタッフと連携し、「地域で一番に選ばれ信頼される動物病院」をコンセプトとした各拠点を「いのちの交流の場」として位置づけ、他社や他の病院と差別化を図るアプローチ方法を検討している。
A社は顧客となる飼い主とのコミュニケーション手法を確立し、それに伴うコンテンツやメディア展開案を求めており、顧客との関係性を重視したプロモーションの実現を模索している。
2.施策の運営と実施効果測定
- 週単位でメディア展開の実績を確認したい
- 可能な範囲でメディア利用者のレスポンスを管理したい
- A社の担当者は、本社経営企画室を中心に2名を予定
3.想定予算
- 印刷物作成費、ハードウェア、ソフトウェア、開発費などで、総額1,500万円以内を想定
4.施策の実施期間
- 7月1日に施策開始、来年3月31日までを第1フェーズとして予定している
- 4月から6月下旬までが運営業務のピークを迎えるため、コミュニケーション施策は、業務のピークを考慮したものとしたい
5.創業について
- A社は「地域で一番に選ばれ信頼される動物病院でありたい」といった思いで山咲社長が設立した、動物病院を運営する企業である
- 獣医師でもある山咲社長は学生時代から、気軽に来院できる動物病院があれば、病気の早期発見や早期治療につながり、結果的にペットの寿命に大きく影響すると考えていた
- 「飼い主とペットが安心できる空間の提供」を目指し最適な事業内容を追求した結果、現在の「バンデ動物病院グループ」となった
- 「バンデ動物病院グループ」は犬や猫を対象としており、埼玉県所沢市を中心に3つの拠点で運営されている
- 各拠点には動物病院のほか、ペットサロンを必ず併設しているが、利用率は低い
6.組織について
- 「バンデ動物病院グループ」は、従来の院長と獣医師といった階層による組織構造ではなく、「コンセプト」を重要視している
- 「信頼できる獣医でありたい」といった「コンセプト」に賛同し、自然に「獣医師」をはじめとする「スタッフ」が集まった
- 「AS(Animal Satisfaction:動物の満足)」「CS(Customer Satisfaction:飼い主の満足)」「ES(Employee Satisfaction:スタッフの満足)」といった3つの満足度向上に力を入れているが、満足度の測定方法が確立できていない
7.グループ展開について
- グループ展開によるメリットの1つは、スタッフ数の多さである
- 勤務体系にゆとりがあらわれ、難題に対しても複数の知恵で解決することが可能になる
- しかしながら、単純に動物病院の数を増やす戦略は考えていない
- 院長として能力がある獣医師が方針を持ち、支えるスタッフが揃った段階から新病院を設立する
8.診療について
- 無料カウンセリングを実施し、安心してペットが診療を受けることができる体制が飼い主に評価されている
- 動物に苦痛を与えない、迅速な治療を提供しているが、飼い主に十分な訴求が出来ていない
- 一般的な診療のほか、健康診断やワクチンの接種なども行っている
9.動物病院市場について
- 20年間バブル崩壊の影響を受けずペットブームの恩恵を受け拡大してきたが、動物病院の数が増えることで飽和状態となり、本格的な生存競争が行われている
- 多くの開業医は、獣医師として病気を治すことに専念したいと考えるが、経営や営業もしなければならないといったジレンマに苦しんでいる
- 有名大手流通チェーンは全国展開しているショッピングモールで動物病院を次々に開院している
- 飼い主の中では、「ペット=家族」といった概念が一般化している
- 「CT(Computed Tomography)」や「MRI(Magnetic Resonance Imaging)」などによる高水準の医療を求める飼い主が増えている
- 飼い主の権利意識が強くなる傾向があり、動物病院とのトラブルが増えている
10.施設の運営について
- 「マーケティング」を重要視している
- その結果、現場スタッフに対し、診療に集中する環境を用意できた
- 業務フロー改善は「CS」の向上に寄与するため、継続的な実施を心掛けている
- 迅速な「連絡システム」「危機回避法」などについても検討したい
11.ESについて
- スタッフ個々の能力やそれぞれの状況、飼い主の希望に合わせた運営システムは最小限に設定している
- 基本的にはスタッフ「個々の判断」に任せている
- 「個々の判断」については、判断の是非についてスタッフの考えを聞く、話し合いの場を設けているが、スタッフ間での共有が図れていない
12.設備について
- 各拠点は、駅から徒歩20分程度の住宅街に隣接した商業地域にある
- 「受付」から「診療」「調剤」「会計」まで、できる限り待たせない構造を目指している
- 施設は赤い屋根に時計を設置した、欧米の学校を意識したレストランのような建物である
- 複数の木製ベンチを並べて設置した、くつろげる待合室を用意している
- ペット同士のトラブルを避けるために、「猫専用待合室」や「屋外待合室」を設置している
- 「呼び出しベル」により、散歩しながら診察を待つことが出来る
- 2005年に「CT」、2007年に「MRI」を各拠点に導入した
13.ペットサロンについて
- ペットサロンでは、草原をイメージしたペットホテルを提供している
- 2畳分の草花をテーマとした個室である
- 全8室用意され、冷暖房のほか防音も施されている
- 砂浜をイメージしたトリミングスペースも設けている
- トリマーは施術のほか、病気の早期発見や健康管理に配慮している
- 「診察」「ホテル」「トリミング」といった3つのサービスを活かし、ペットにとって「たすかる」サービスを提供し、相乗効果をあげている
14.ドライブスルーの設置について
- 自動車により来院する中高年齢層の顧客を取り込むために、2015年7月にはドライブスルーを所沢本部に設置し、チェックインできる仕組みを導入する予定である
- 薬やペットフードのみであれば、自動車から一度も降りずに購入できる
- 利便性だけでなく実利をもたらすサービスを目指している
- 所沢本部の評価次第で、他拠点への設置も行う予定である
15.情報発信について
- 最寄り駅の看板に広告を出稿しているが、費用対効果に疑問を感じている
- 折込みチラシとポスティングを実施しているが、近隣の住民から「ゴミが増えて迷惑だ」とクレームが入ったことがある
- 月刊で「バンデ動物病院新聞」を院内で配布しており、飼い主からの評価が高い
- 新聞には、ワクチンや健康診断のお知らせのほか、新療法の紹介、ペットコンテスト、受診後の飼い主の声などを掲載している
- Webサイトを開設しており、主に「病院名」「診療時間」「住所」「電話番号」「診療内容」を掲載している
- スタッフによるブログを設け、診療時に感じたことや治療に関するトピックを掲載し、顔の見える情報発信を心掛けているが、アクセス数が少ない
- 施設でアンケートを実施した結果、「安心してペットを任せることができる。」「他の動物病院と比べ、待ち時間が短い。」といった意見があった
- Webサイトでアンケートを実施すると、「動物病院として敷居が高い。」「料金が高そう。」「実際の料金がわからない。」「情報量が少ない。」などとの意見が寄せられた
- ドライブスルーを開設した際は、記念イベントとして「内覧会」の実施を検討している
16.競合について
- 所沢本部から自動車で10分程度の場所にあるショッピングモールに、カリスマ獣医師が経営に参画している大企業B社傘下の「ビクトリー動物病院」が進出してきた
- 「ビクトリー動物病院」は、国内屈指の設備と技術を持つ動物病院と連携している
- 「ペットショップ」のほか「ペットサロン」「ドッグラン」も併設されている
- 主な利用者は、併設の「ペットショップ」で購入した20代後半から40代前半の飼い主を中心としたファミリー層であり、ショッピングモールの利用者である
- ショッピングモールと連携した共通ポイントサービスが実施されている
- 入間にある拠点から自動車で15分程度の場所には、ショッピングモールの建設予定がある
- 狭山にある拠点の競合は主に個人経営の動物病院であるが、犬と猫の症例に対する実績は、グループで展開する「バンデ動物病院」が群を抜いている
- 各拠点での認知度は、競合と比べ、「バンデ動物病院」が圧倒的に高い
17.今後の方針について
- 対象顧客となる「飼い主」は、若年者から高齢者までとし、それぞれに対する施策を実施する予定であるが、「高齢化社会」への対応を重要視している
- 自分なりの価値観を持ち、年齢に関係なく仕事や趣味に対し意欲的に取り組む、60歳代半ばの団塊世代により構成される「アクティブシニア層」と呼ばれる男女に対する利便性を高め、中長期的な関係を築きたいと考えている
- 中長期的な関係の先に、回診サービスの展開を検討している
- 「高度な診療技術」「高いコミュニケーション」「多くの方に知ってもらうマーケティング」「効果的な運営管理」といった4つの柱がそれぞれに密接な関わりを持たせながら全てを少しずつ高めたい
- 「飼い主」と「ペット」にとって、生涯のパートナーとして受け入れられたい
以上
A社の概要
法人名 :株式会社A
設立: 平成14(2002)年
従業員: 40名
資本金: 10百万円
収入: 350百万円(2014年3月期)※
所在地 :埼玉県所沢市
役員 :代表取締役 山咲真 専務取締役 高橋里奈 常務取締役 渡辺幸一
事業: 動物病院事業、ペットサロン事業
企業沿革
2002年 第1号施設「所沢バンデ動物病院」を開設
2004年 第2号施設「入間バンデ動物病院」および第3号施設「狭山バンデ動物病院」を開設
2005年 各施設にCTを導入
2006年 「所沢バンデ動物病院」にペットサロンを併設
2007年 各施設にMRIを導入
2009年 「入間バンデ動物病院」にペットサロンを併設
2011年 「狭山バンデ動物病院」にペットサロンを併設
2014年 Webサイトをリニューアル
経営理念
動物医療を通し、動物と人々の生活を豊かにすることで社会に貢献する。
社長プロフィール
山咲 真(やまざき まこと)
平成5年にH大学獣医学部を卒業。
経営コンサルティングファームで新規事業の開発、獣医学書の専門出版社で広告営業および通販事業部を立ち上げる。株式会社Aを設立。モットーは「あきらめずに前進する」。趣味は、サッカー観戦、登山。
A社損益計算書(2012年度、2013年度)
2012年度 | 2013年度 | |
売上高 | 340,000 | 350,000 |
売上原価 | 80,000 | 82,000 |
売上総利益 | 260,000 | 268,000 |
販売費・一般管理費 | 215,000 | 220,000 |
営業利益 | 45,000 | 48,000 |
営業外収入 | 3,000 | 5,000 |
営業外費用 | 4,000 | 3,000 |
経常利益 | 44,000 | 50,000 |
設問
問1 A社の顧客コミュニケーションにおける課題を3つ記述しなさい。
・課題1:
・課題2:
・課題3:
問2 問1の課題解決に向け、A社へ提出する提案書に記載する施策について記述しなさい。
・施策の想定ターゲット顧客
・コンテンツやコミュニケーション施策
・施策で使用するメディアと選定理由
問3 A社へ提出する提案書のタイトル、提案の主旨(特徴)を記述しなさい。
・提案書のタイトル
・提案の主旨(特徴)
問4 A社へ提出する提案書をクロスメディアエキスパートとして記述しなさい。【記述形式:A4・横書き・3枚】