印刷物を効果的に活用していく上で、デジタルメディアと連携することが重要になっている。そのときにポイントになることの一つが消費者視点のメディアビジネス戦略である。
印刷業界が印刷物を通して担ってきた、顧客のコミュニケーション支援や販売促進支援の市場が多メディア化によって変化し、印刷物の役割が低下している。
Webはともかく、LINEやフェイスブックなどSNSをメディアと捉えることに異論もあるだろうが、現実的には消費者にとってはメディアの役割を果たしている。結果、企業も販促やコミュニケーションにこれらを活用するようになっている。印刷会社が、これからも顧客のコミュニケーション支援や販売促進支援を行う企業であると、そのビジネスを定義するならば、デジタルメディアの活用は不可欠になる。こういったメディアを活用するときに印刷物を使う時以上に気をつけなければならないことの一つが消費者視点でのメディア戦略であろう。
『JAGAT info』8月号では印刷物をやめて、入試広報をすべてWebにした大学の事例を紹介した。これは消費者視点(ユーザーである受験生)に立ったときに大学がとったメディア戦略なのである。スマートフォンが普及し、受験生も当たり前に活用するようになると、Webで情報提供したほうが到達しやすいということである。受験生は印刷物の分厚い学校案内や学部・学科案内(理系受験生なら不要な文系の情報が載っている)を持ち運んで見るよりも、移動中や友達と話す時など、必要なときに必要な情報だけをスマホで見たいのである。そこで、印刷業界がいくら印刷物のメリットや印刷物の良さを訴えて、発注者である大学側を納得させられたとしても、それを使う側の受験生には見られないとなれば、お客様の目的を達成する支援ができないことになる。ユーザーがどのようなデバイスを利用し、どのような状況で、どのような情報を求めているのかなどをしっかりと検討してメディア戦略を作っていかないと、顧客の問題を解決するソリューション提供などは難しい。
『JAGAT info』10月号では、特集「消費者視点のメディアビジネス戦略」では、コンサルタントの小林啓倫氏に、新たにメディア化する情報機器やツールを紹介いただきながら、今こそ求められる消費者視点のメディアデザインを行うために必要となるものの見方、捉え方について紹介している。
また、これからメディア戦略を考える上で、印刷業界が注目すべきオムニチャネルについて、大日本印刷の林典彦氏にご紹介いただいた。印刷会社が印刷物を提案していく上でも、Webをはじめとするデジタルメディアとデジタルツールを使いこなすことが不可欠で、それが顧客ビジネスの支援で効果を上げることになると指摘した。
印刷業界にとっては、ずっと印刷物制作が利益を生み出す原点であり、売り上げの中心である。だからこそ、顧客視点を踏まえた上で、印刷物のメリットを追求し、付加価値を付け、顧客に訴求するためにデジタルツールを活用し、Webなどのデジタルメディアと連携するような形で印刷物を提供していくことが求められる。
このほか『JAGAT info』10月号では、速乾印刷の導入によって利益アップにつなげた取り組みについて、2社の経営者の方に紹介していただいた。
(JAGAT info編集 小野寺仁志)
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