『ザ・マーケティング』営業レスの時代がきている

掲載日:2017年2月27日

page2017のテーマ「ビジネスを創る」に呼応して、基調講演1ではアメリカ最新マーケティングメソッドとその具体例、印刷ビジネスのヒントが語られた。

初日の基調講演では、『ザ・マーケティング』の著者ロン・ジェイコブス氏が、アメリカのマーケティング事情をわかりやすい語り口で解説し、聴衆を魅了した。 マーケティングテクノロジーの進化とそれに対応するために必要な情報を得ること。そして、それと同時に人が果たせる役割の大きさを示唆したジェイコブス氏の講演から、キーワードを幾つか紹介したい。

■カスタマージャーニーを理解する

マーケティングを取り巻く環境や世界は進化して、非常に複雑化している。顧客が様々な思考や行動をし、購買にいたるまでの道程のことをカスタマージャーニーという。世代の違いも考慮して、どのようなカスタマージャーニーがあるのかを各ブランドや製品で個別に考えていかなくてはいけない。ちなみに、どのカスタマーもスタート時点はオンラインである。

広告代理店という呼称はもはや時代遅れである。メディアに対する代理店ではなく、これまでなかったサービスを提供していかなければ生き残ることができない。広告業界で起きている変化はまさに印刷業界でも起きている。どの業界でもどのビジネスでも市場がどんどん変化しているのだから大きな変革や変化に身を投じるべきである。印刷ビジネスが印刷以外のサービスを提供するようになってきていることはよいことだが、それは広告代理店やその他の業界と競合することを意味する。

バリアブル印刷は印刷における一大変革だが、それは20世紀のイノベーションであり、21世紀型の革新ではない。クライアントは「次に何をしてくれるのか、どんなサービスをしてくれるのか」と問うだろう。

■営業レスの時代がきている

営業担当に対して「とにかくお客様を訪問しろ」といえる時代ではなくなっている。なぜなら顧客がどんな情報を集めているかを想定して、それに対応する答を用意していないと顧客にとって無駄な時間を使わせることになるからだ。

顧客は、いきなり営業担当や販売員に話をききたいとは思わない。消費者のほうが賢くなって、情報をもっている。欲しい商品に関しては、営業担当より顧客のほうが熟知しているかもしれない。購買意欲が固まった段階で初めて営業担当と話がしたくなるのである。

営業スタイルは既に劇的に変わり、相当な部分で営業レスの取引が行われている。確実に言えることは、どの業界でも見込み客は実際に購入意思を明確にするまではあまり営業担当と話をしたがらない。これは現実のことである。

■仕事はすべてデータから

マーケティングコミュニケーションのために重要なのがアジャイル(敏捷性)な仕事の仕方である。マーケティングは今まで線で捉えられていた。スタートと終わりを決めて線でつなぎ、それを縦にしたのが、セールスファネルの概念図であろう。今日のマーケティングはそれだけではだめで、回転させて継続させていくことが大切である。

昔ならデータがあるかないかで話が進んだが、現在は、データベースのマネジメントプラットフォームがあるかないかが話題になっている。

いまやWebサイトは様々な機能を持っており、eメール、ソーシャル、CRM、モバイルとすべてとつながっている。そこで紙のDMにもまだ活路があるといえるだろう。コストを下げるやり方、今までと違うやり方、他のメディアと組み合わせるやり方など考えるべきことはいくらでもある。

大切なのは、お客様にとってどんな存在になりたいのかを考えることである。変化すること、順応することを恐れないでほしい。まだまだ道はあるのだということもお伝えしたい。

 ※以上はロン・ジェイコブス氏の講演のごく一部に触れただけである。『JAGAT info』2017年3月号では講演内容を紹介するので、そちらをあわせてご覧いただきたい。

(JAGAT 研究調査部 上野寿)

【関連情報】

JAGAT印刷総合研究会では、広告業界の最新動向のミーティングやカスタマージャーニーにフォーカスしたミーティングを企画中です。近日中にWeb等で告知いたしますのでご期待ください。