日本の広告費は6兆2,880億円、5年連続でプラス成長となった。広告市場の動向は印刷市場にも影響を及ぼす。2016年のトレンドを読み解く。
日本の広告費は5年連続増
2017年2月23日に電通『日本の広告費』が発表された。
それによると、2016年の総広告費は6兆2,880億円(前年比101.9%)で5年連続でプラス成長となった。
日本の広告費は「マスコミ4媒体広告費」「インターネット広告費」「プロモーションメディア広告費」の3つに大別される。
マスコミ4媒体広告費は、前年比99.6%の2兆8596億円。
このうちテレビメディア広告費(同101.7%)とラジオ広告費(同102.5%)は好調だ。
2005年には1兆円以上あった「新聞広告費」が5,431億円(同95.6%)になり、同じく5000億近くあった「雑誌広告費」が2,223億円(同91.0%)と印刷メディアの落ち込みは大きい。
一方、「インターネット広告費(媒体費+広告制作費)」は1兆3,100億円(同113.0%)となり、電通が推計を開始した1996年から常に右肩上がりのプラス成長を続けている。
なかでも、2016年は媒体費単体で初めて1兆円を超えるなど、インターネットメディアへのシフトが加速している。
コンテンツ産業の市場規模は12.1兆円
一般財団法人デジタルコンテンツ協会『デジタルコンテンツ白書2016』によると、2015年のコンテンツ産業の市場規模は12兆505億円、前年比100.4%とほぼ横ばい(微増)となった。
コンテンツ区分別に見ると、規模が大きい順に動画 4兆3,655億円(同100.7%)、静止画・テキストが3兆6,769億円(同97.1%)、ゲームが1兆7,026億円(同99.1%)、音楽・音声が1兆3,861億円(同103.7%)、複合型(インターネット広告、モバイル広告)が9,194億円(同111.5%)となった。
2015年の書籍販売は7,420億円(同98.3%)と9年連続のマイナス成長だった。そのようななかでも文芸書の健闘が目立ち、その原動力となったのは又吉直樹氏『火花』(文芸春秋)である。7月に芥川賞を受賞し、累計240万部の大ヒットを記録。又吉氏がメディアに紹介した書籍もヒットするなど書籍全体の販売増に貢献した。
電子書籍は1,594億円(同124.4%)、電子雑誌は242億円(同166.9%)と大きく拡大した。インターネット広告(フューチャーフォン含む)は9,194億円(同111.5%)と引き続き成長している。
メディアと技術の進化が与える印刷市場へのインパクト
『2016年 日本の広告費』と『デジタルコンテンツ白書2016』に共通しているのは、広告市場とコンテンツ市場の両方が市場規模を拡大していることである。
インターネット・放送・通信系メディアの高成長によってもたらされる市場の拡大は、メディアビジネスの商機を増やすことにつながっている。
お客様のコミュニケーションを支援し、プロモーションのお手伝いをするために、印刷会社は情報の届き方、ユーザーの行動変化に注目していかねばならない。
広告主はどのプラットフォームを使えば、効果的にユーザーへ届くのかを考えている。
一律に同じ手法をとるのではなく、どんな情報を、どのタイミングで届けるのか、敏感でありたい。
そのためには、日々変化していくメディア環境やトレンドの変化を捉えることは重要だと言える。
(研究調査部 小須田紀子)
関連情報
印刷総合研究会 印刷マーケティング部会 月例研究会
2017年3月23日 (木) 14:00-17:00
メディアと技術の進化が与える印刷市場へのインパクト
~広告メディア・コンテンツ産業・AI(人工知能)の最新動向~
https://www.jagat.or.jp/archives/33231