仕事を集める、仕事をさばく、そしてワークフローの自動化という3つがポイントとなる。
デジタル印刷機のみならずオフセット印刷においても各種プリセットの自動化などにより小ロット対応が進んでいる。しかし、印刷機だけが対応していても小ロットの仕事で利益を出すことは難しい。ポイントとなるのは次の3点である。
1.仕事を集める仕組み
2.仕事をさばく仕組み
3.製造工程(ワークフロー)の自動化・省力化
1.仕事を集める仕組み
小ロットの仕事を従来のように営業担当者が“足”で集めていては効率が悪い。Web上での店頭窓口(ストアフロント)の仕組みが求められる。(印刷物の)仕様の選択、見積り、入稿、校正などの機能を備える。
2.仕事をさばく仕組み
従来のように営業担当者が印刷物の仕様や納期などをシステムに入力して作業指示書を発行していては、その伝票処理が工程のボトルネックとなりかねない。作業指示書を電子化する標準フォーマットがCIP4が策定するJDFである。JDFを利用することで、直接製造機器に作業の指示情報を伝えることができる。また、作業の実績情報はJMFというデータ形式で製造機器から直接受け取ることができる。これにより作業日報の電子化、自動作成が可能となる。双方向でデータ交換できることがJDF/JMFの大きな特徴である。
もうひとつ、仕事をさばく仕組みで欠かせない要素がスケジューリングの自動化である。正味の印刷時間は5分、10分という仕事が大量にあるとき、このスケジューリング(日程計画)を人手で行うのは現実的ではなく、システム化、自動化が求められる。スケジュールソフトがJDF対応していれば、計画(指示)情報をJDFで製造機器に流し、実績情報をJMFで製造機器から受け取るという運用が可能となり、リアルタイムかつ進捗状況に応じた柔軟な進捗管理が可能となる。MIS(基幹システム)がJDFのハンドリングを一手に引き受けるという考え方が中心であったが、MISと製造機器の中間に位置する生産制御・工程管理のシステムが各社から提案されつつある。
3. 製造工程(ワークフロー)の自動化・省力化
印刷機など設備単体の自動化だけでなく、前後の工程との連携が重要となる。印刷機と製本ラインとの接続には、インライン、オフライン、ニアラインという3つの形態がある。生産性を優先すればインライン接続が理想的ではあるが、専用ラインとなるので汎用性が犠牲となる。ニアラインとは印刷機のそばに製本加工機を設置し、自動プリセットや刷り本のバーコード読み取りなどで効率化を図る。
また、ワークフローの自動化で最近注目されているのが面付けの自動化である。現段階では事前に登録されたテンプレートの範囲内にとどまる運用が中心であるが、将来的にはAI的な手法による自動化も期待される。面付けの自動化が実現できれば、工務(生産管理)と製版の統合が見えてくる。効率化への期待は大きい。
2017年3月24日のテキスト&グラフィックス研究部会では、「工務業務(製造設計、日程計画)の自動化を考える」というテーマで、メーカーからシステム概要を伺うとともに現状と課題を掘り下げる。
(研究調査部 花房 賢)