『印刷白書2014』―JAGAT大会に合わせて刊行

掲載日:2014年10月20日

今年の印刷白書では、イノベーションを喚起するため「デジタルマーケティングからみたメディアビジネス」を特集のテーマとした。

JAGAT大会2014に合わせて発行

今年もJAGATでは、『印刷白書』を刊行した。2006年版から書籍の体裁にリニューアルして、会員企業の代表者に1冊献本している。2010年からは8月末の統計資料まで反映しているため9~10月の発行になっている。もちろん、印刷産業経営力調査、印刷業毎月観測アンケートなど、JAGAT独自の調査データも紹介している。

10月3日に「JAGAT大会2014」を開催した。Joe Webb博士をアメリカから招聘し、久しぶりに会場を椿山荘に戻して160名の参加者を得た。Webb博士が印刷業界で有名になったのは、2010年に本国で出版された”Disrupting the Future”である。2年後の2012年に日本では『未来を破壊する』の名で翻訳された。何もしなければ決して明るくない印刷業界の「未来を破壊する=明るい未来に導く」ことを意味した同書の名は、日本の印刷業界で合言葉になるほどのインパクトを与えた。

今回Webb博士には、ポスト『未来を破壊する』ともいうべき「メディアミックスにおける印刷の新たな役割」を講演テーマに依頼した。講演内容は、『JAGAT info』でも詳細を報告するし、page2015に向けてあらゆる機会で露出していきたいと考えている。 その内容は、まさに『印刷白書2014』全体を通して提言したいことであり、そのことも鑑みて「JAGAT大会2014」開催日に合わせて10月3日に発行することにしたのである。

特集は昨年取り上げたデジタルイノベーションの先にあるもの

2013年度版の印刷白書の特集「デジタルイノベーションと新領域ビジネス」では、DTPは印刷業界にとってイノベーションであったか? と問いかけた。デジタル化の総括と今後の新たな挑戦、事業展開、印刷会社がもつべき知識やスキルについても考察した。

『印刷白書2014』では、そこをさらに深掘りしており、まさにポスト『未来を破壊する』の世界を特集に組んだ。イノベーションを喚起するため「デジタルマーケティングからみたメディアビジネス」をテーマとした。消費者視点によるビジネスの必要性を確認して、印刷の新たな役割とその実現可能性を展望している。
いま起きているデジタルの大きな波は、DTPの時とは性質が違うものである。それを乗り切り、自社の強みに転換するために何をするべきか、特集で考察している。

2014年版の特徴と新しい課題

 今年度版も印刷産業の市場規模を推計できる統計資料を一覧表にまとめ、印刷産業以外の方にも印刷産業の全体像を理解してもらえるような構成にした。

産業連関表による印刷需要の考察などは、例年大きな変化があるものではないが、このような手法は知っておくと印刷産業の特徴や他の産業がどのような機能を持っているか模式的に把握することができる。印刷産業とその主要取引産業の実態を比較した図表なども掲載している。 また官公庁をはじめ各種データ駆使して、「経営比率と損益構成の比較」など、JAGATならではのオリジナルな切り口でまとめている。

 第3部「印刷産業の経営課題」では、最初に海外事例としてイギリスの印刷会社4社への訪問をレポートした。ここでは、新たな付加価値を提供するビジネス戦略を報告している。 さらに今年の白書では初めて、ビッグデータのあり様にも触れ、データサイエンティストがこれからのビジネスに重要な役割をもたらすことに注目した。 印刷産業を取り巻く環境や産業構造が大きく変化している中で、どのようにビジネスを展開していくべきか。印刷通販、3Dプリント、地域活性化ビジネスなど印刷業界の新たな課題についても取り上げている。また一見すると自社には関係のなさそうなデジタルが引き起こすメディアビジネスの動向もその潮流は押さえておいたほうがいい。

もちろん興味のある分野から好きに読んでくださればいいのだが、特集ページから最後まで一気に通して読むと編集意図がご理解いただけると思う。全体構成として最終的に人材の問題に行き着くことを示している。企業の成長のためには、人材の成長は不可欠である。そのことをあらためて認識できるように配慮した。ぜひ事業戦略の一助として『印刷白書』をご活用いただきたい。

(JAGAT 研究調査部 上野寿)

 ■『印刷白書2014』

hakusyo2014