近年、店舗や倉庫、高架下などの空きスペースを利活用し、これまでにない切り口の「新しい交流の場」「体験の場」に作り変え、コミュニケ―ションと情報発信の基地として活用する事例が増えている。
3月29日(土)、JR阿佐ヶ谷駅~高円寺駅間の高架下に、アニメの作り手とアニメファンであるユーザーが交流できる「阿佐ヶ谷アニメストリート」が オープンした。アニメ・ゲーム作家との商品開発など実験的な挑戦を行うラボやアニメ制作会社が手掛ける未来の声優が店員を務めるカフェ、3Dプリンタの出 力サービス、アニメ・CG界で即戦力となる人材の育成を目指した教育施設など、物販だけでなく「体験」を重視する個性的な16店舗が立ち並ぶ。
■オープン当日、多くの人で賑わう「阿佐ヶ谷アニメストリート」
「阿佐ヶ谷アニメストリート」をプロデュースするのは、ジェイアール東日本都市開発だ。「阿佐ヶ谷アニメストリートのほかにも、秋葉原から御徒町へ人の流れを作ることを目的に、「ものづくり」をテーマにした工房兼ショップが並ぶ「2K540 AKI-OKA ARTISAN」(2010年)、日本全国の逸品が集まり、食品だけでなく食の奥深さや伝統に触れることができる「CHABARA AKI-OKA MARCHE」(2013年)などもプロデュースしている。
これらの施設はいずれも、作り手(クリエイター)と消費者(ユーザー)、企業を結ぶ新しいコミュニケーションスポットとして企画・開発されている。「阿 佐ヶ谷アニメストリート」も例外ではなく、「作る人」と「観る人」が集い、交流することでアニメやゲームの現場に理解を深める新たなファンを獲得し、新し い作品や新人クリエイタ―を創出することまでを視野に入れている。
■お客さんの前でアフレコするカフェ店員。ガラス張りで外から様子を見ることもできる
「アニメ」と聞くと、秋葉原など別の場所を思い浮かべる人も多いかもしれないが、阿佐ヶ谷駅のある杉並区は以前からアニメ制作会社が多く、アニメの歴史や 仕組みを紹介する「杉並アニメミュージアム」も所在するなど、都内有数の「アニメを生む街」として知られている。アニメを消費するだけでなく生み出してき た歴史や文化があるため、「見る人」から「作る人」へ育成てる人材や機会などを提供できる素地を持っている。
「阿佐ヶ谷アニメストリート」は、その地域が持つ素地に注目し、と高架下という空きスペースを効果的に組み合わせた、興味深い取り組みである。
このように、それぞれの街や地域は、文化や歴史、自然環境などに裏打ちされた特有の「個性」や「顔」を持ち、一つとして同じものは存在しない。その特性を 再発見、定義付けし、地域が持つ遊休資産などと結び付けて、新しい交流スポットや観光スポットにして地域内外の人にPRしていく。そうすることで、これま でにない、新しい「人」を取り込み、情報が集まり、新しいモノやコト、価値を生み出す場所へと変わっていくことができるのだろう。
今回は「アニメ」をテーマにした事例に触れたが、次回は別のテーマの事例を紹介したい。