企業と学生のミスマッチにより「内定辞退」「早期退職」が多発する等、採用活動における課題は山積みだ。ミスマッチを減らす1つの方法として全部門参加型の採用手法が注目を浴びつつある。
■ミスマッチによる内定辞退や早期退職が課題
マイナビ内定状況調査によると、2017年卒の学生の内定率は8割と高い水準に達し、依然として学生優位の採用市場で企業は採用が困難な状況が続いている。また、学生からの内定辞退や、戦力化する前の早期退職も問題となり、内定、採用後も予断を許さない状況だ。理由は、労働環境、人間関係、給与、仕事内容など千差万別だが一括りで表現するなら「企業と学生のミスマッチ」である。
この問題は企業、学生双方に原因があるのだが、企業側は、どうしても企業イメージを良く見せたいがために、取り繕った情報のみを伝え、仕事内容や職場の雰囲気など現場のリアルな情報を伝えきれていないことが大きい。また、採用活動において人事部門が仕事内容を咀嚼して、採用サイトやパンフレットの制作や説明を行っている場合は、現場と乖離した情報になりやすい。結果、入社前に抱いていた「理想」と「現実」のギャップが生じ早期退職につながる。
■採用は人事部門だけではダメ
早期退職を防止するためにはミスマッチを無くすことが必要であり、「理想」と「現実」の落差を少しでも埋めることである。そのための施策として、人事部門だけではなく営業、製造、制作の現場責任者や担当者が、採用方針の策定から説明会の開催、選考活動までのすべてを関わる「全部門参加型採用」が注目されている。メリットは各部門の仕事内容や職場の雰囲気など現場のリアルな情報を採用メッセージに加えることができる。また、採用方針の策定から一気通貫で関わることで、求める人材や自社の訴求ポイントを深く理解できるため、自社が欲しい人材を意識した学生に対して、適確なメッセージを発信できる。結果として、ミスマッチによる内定辞退や早期退職を減らせる可能性がある。
ある印刷企業では、採用プロジェクトチームを発足した。メンバーは、営業、製造、制作、システム部門から選考している。また役職者や若手メンバーも積極的に参加させることで「部門横断+役職縦断」のプロジェクトチームで推進した。それぞれの立場で採用について考えるため、今までは思いつかなかった自社の魅力や、学生への訴求ポイントを発見できたようだ。また、副次効果として、参加メンバー同士が共通の目標(採用)を目指すことでメンバー同士の人間関係が深まることや、自社の魅力や特徴について発見する機会となり愛社精神が高まった等の声があった。
売り手市場のなか、2018年卒の採用市場も厳しい状況が続くであろう。しかし採用活動は、企業の将来性を左右する重要な要素である。採用担当者だけに任せるのではなく、社員全員で関わる位の情熱で取り組めば、その想いは学生へ届くはずである。
CS部 塚本直樹