ヒューマンエラーによる事故・ミスは削減できる

掲載日:2017年5月10日

印刷業界を取り巻く環境は依然厳しいが、だからこそミス、トラブルによる利益低下は避けなければならない。

ヒューマンエラー(human error)

ヒューマンエラーとは、人為的過誤、失敗(ミス) のことである。また「意図しない結果を生じる人間の行為」(JIS Z8115:2000)と規定されている。日常の例では、電車に傘を忘れる、メール送信時の添付ファイル忘れ等がある。これらは軽傷で済むが、運輸や医療関連の現場では人命に関わる事故になってしまうこともある。
印刷物製作は、人命には関わらないもののヒューマンエラーは深刻な問題である。仮に、印刷後にミスが発覚すると取り返しのつかない事態になる。よって印刷会社では致命傷になりかねない要因だ。

とにかくレールを敷く

印刷業界では、トラブルや事故が数多く発生している。これは、印刷物の多くが一点一点のオーダーメイドのため、標準化が難しいことや製造工程が複雑であることが要因である。私自身、印刷会社のプリプレスを担当していたころ、毎日のように何らかのミス、トラブルが発生していた。その大部分はヒューマンエラーいわゆるオペレータの過失によるものだ。
スキルの有無や性格的な向き不向きもあるのは当然だ。しかし、中小企業では、人材の確保をはじめ、適材適所がうまくいくとは限らず、限られた人材で勝負するしかない。
例えば、電車はレールが敷かれ安全装置が装備されているので事故が少ない。一方、自動車は自由に方向、速度を決められるので、その自由度から電車に比べ圧倒的に事故が多くなる。
それでは、印刷会社もレールを敷きつめルールを徹底することにより、ミス・トラブルを削減できるだろうか。そのためには、オペレータが作業しやすい環境、すなわちレール作りとオペレータ自身のスキルアップ、人材育成が重要である。
具体的に、レールを敷くということは、マニュアルを作成したり、オペレーションの標準化、ルールを徹底することである。
印刷会社の具体的なトラブルを分析すると、圧倒的にヒューマンエラーが多いのが現実だ。できるだけ標準化した作業に近づけ、ルールを徹底することが必要になる。「言うは易し行うは難し」ではあるが、とにかくレールを敷かない限りミスは削減できない。

ミス、トラブルによって失うもの

ヒューマンエラーによるミス・トラブルによって引き起こされる損害額は計り知れない。損金だけではなく、大切な信頼をも失ってしまうのだ。
ヒューマンエラーは、その多くが「うっかりミス」「ポカミス」であるが、そのエラーが重大なトラブル、事故に発展するという特徴がある。米国の安全技術者ハインリッヒの法則によると、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景にも300の異常が存在するという。大事故の背景にある中小のトラブルをいかに防いでいくかが重大事故を起こさないための要因だ。まずは、現場において、事故の背景にあるヒヤリ・ハットの情報収集が重要である。この部分を分析、削減することにより大きな事故の防止につながる。しかし、風通しやコミュニケーションが悪い組織では、こうした異常・小事故のヒヤリ・ハット情報が集まらない傾向がある。
日常的に起こるトラブルの危険性を放置することは大きなリスクである。一般的にルールがシンプルに整備された職場、コミュニケーションが良い職場ではヒューマンエラーが少なく、判断基準が不明確でムリやムダの多い職場ではその逆になると言われている。
印刷会社の利益率が低迷しているなか、ヒューマンエラーによる利益低下だけは避ける必要がある。

(西部支社長 大沢 昭博)

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