印刷産業は1年間にどれだけ原材料を購入しているか

掲載日:2017年6月2日

産業連関表で印刷産業の費用構成を見ると、材料費や同業者間取引は印刷市場の縮小を反映して2000年から2005年に大幅に減少し、その後も減少傾向にあるのに対して、商業(卸売マージン額など)は増加傾向にある。(数字で読み解く印刷産業2017その4)

産業連関表をどう見るか

産業連関表は、産業間の取引活動の大きさを金額で評価して「商品×アクティビティ(生産活動)」の行列(マトリックス)にしたものです。下図は産業連関表の構造を簡単に表したもので、縦の矢印の方向に見ると「生産にあたりどれだけの原材料を投入し、どれだけの人件費を要したかなど、生産物の費用構成」が、横の 矢印の方向に見ると「その生産物の販売先」がわかります。

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産業連関表は全産業の1年間の生産活動を一覧できるように設計されていますが、最もサイズの小さい表(産業部門を37に分類した統合大分類)でも9桁までの数字が37×37コマ並んでいます。さらに「印刷・製版・製本」部門の数字を見るには統合大分類よりも大きい108部門表を見なくてはなりません。

産業連関表(基本表)は10府省庁が共同で5年ごとに作成していますが、経済産業省ではこの基本表を補完する延長産業連関表を毎年作成しています。2017年3月には「平成26年延長産業連関表(2011年基準)」が公表されました。延長表には98部門表と54部門表があって、54部門表は図表などに展開するのに適した大きさですが、「印刷・製版・製本」部門は「その他の製造工業品」に含まれています。そこで、「31その他の製造工業品」から「014印刷・製版・製本」を抽出し、「014」を別掲した55部門表に組み替え、印刷産業と他産業の関係を見てみましょう。

2000年から2005年に材料費や同業者間取引は大幅減

55部門表の「014印刷・製版・製本」を列方向(タテ)に見ると、印刷産業がどの産業から1年間にどれだけの金額の生産物やサービスを購入しているかわかります。2014年の上位10部門に関して、2000年以降の推移を見てみましょう。

材料費や同業者間取引は印刷市場の縮小を反映して2000年から2005年に大幅に減少し、その後も減少傾向にあるのに対して、商業(卸売マージン額など)は増加傾向にあって、印刷産業の利益を圧迫しているものと思われます。

産業連関表で印刷需要の変化を見る2017_ページ_2

55部門表で見た印刷産業と他産業の関係を、さらに詳しい基本分類(516×394部門表)で構成比を見たのが次の図です。55部門表の「パルプ・紙・紙加工品」のうち「洋紙・和紙」「板紙」が印刷産業への投入額全体の1/4強を占めています。「プラスチック・ゴム」のうち「プラスチック・シート」が全体の10%程度、「化学最終製品」のうち「印刷インキ」が6%程度を占めています。構成比に大きな変化はありませんが、「商業」のうち「卸売」が2000年の9.2%から2014年には16.7%まで拡大していることから、材料費以上に中間マージンが拡大していることがうかがえます。

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現在『印刷白書2017』の執筆準備を進めていますが、限られた誌面で伝えきれないことや、読者からの問い合わせなどに対しては、「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。今回は産業連関表から印刷産業の費用構成を見ましたが、次回は印刷物の販売先を見てみたいと思います。

(JAGAT 吉村マチ子)