クロスメディアエキスパート論述試験の内容と採点ポイント
※資格制度事務局注
2019年8月試験より設問形式が変更となり、一部下記原稿にある設問内容と異なります。ただし、採点のポイントは変更ありません。
クロスメディア論述試験では、架空の企業に関する8ページ程度の与件文を読み、いくつかの設問に答えるとともに、顧客の課題を解決するコミュニケーション戦略の提案書を作成する。
クロスメディアビジネスは企画・提案から
Webやモバイルなどのデジタルメディアと印刷メディアを融合したクロスメディアコミュニケーションは、既に日常化したと言える。これら分野でビジネスを拡大するには、顧客の課題に向き合い、それを解決するコミュニケーション戦略を構築する能力、提案能力が必要である。そのような能力を磨く手段として、JAGATはクロスメディアエキスパート認証試験を実施している。
本稿では、論述試験の内容と採点ポイントについて解説する。
顧客コミュニケーションにおける課題
顧客コミュニケーションにおける優先度の高い課題を挙げなさいという設問がある。
与件には、提案先企業の事業の経緯や創業時の想い、現在おかれている状況などが記述されている。これは、先方企業の役員へのヒアリング内容をまとめていると言う設定である。
課題とは、現状とあるべき姿や望ましい姿とのギャップであり、かつ解決すべきものである。
本当の課題は自社・自身では気がついていないことも多いため、必ずしも与件に明示されているわけではない。つまり、与件の記述の背景に存在する本当の課題を読み取ることが求められている。
また、企業としての成長や売り上げ増、従業員の満足度向上や福利厚生などは企業の課題ではあるが、顧客コミュニケーションとしての課題とは言えない。この設問で問うているのはあくまでも後者である。
そして、課題解決による影響の大きい、つまり優先度の高い事案を取り上げることが求められる。
ターゲット・コンテンツ・使用するメディア
(1)コミュニケーション施策(2)ターゲット(3)コンテンツ内容(4)使用するメディアと選定理由を記述しなさいという設問がある。
ターゲットが増えてしまうと効果が分散することになるため、1点または2点程度に絞り込むべきである。
近年ではコンテンツマーケティングという言葉もある。紙メディアでもデジタルメディアでも、ターゲット層にとって魅力あるコンテンツを提供することが重要であり、企画提案の大きな要素となる。
メディアの特性を理解して、活用しているかどうか。現在、40代以下の年代で新聞を定期購読している家庭は、ごく少数となっている。そうなると20~30代向けの商品の折込みチラシを配布しても、効果は期待できない。
また、カタログやフリーペーパーを発行するのであれば、いつ、どこで、どのように配布するのか。ターゲット層に着実にリーチできるのか。実効性の高いメディア活用策が要求されており、説得力のある選定理由を記述しなければならない。
提案書の採点ポイント
提案書の内容は、様式点、内容点、論理点、採用点という区分で、採点をおこなっている。
様式点とは、提案書として必要な項目が含まれているかどうかを見ている。タイトル、挨拶文、現状分析・課題設定、提案概要・内容、スケジュール、費用、提案による効果と言う項目を網羅しているかどうかを見ている。
内容点では、以下の観点から提案内容の完成度、充実度を見ている。
(1)与件に応じたコミュニケーション戦略となっているか(与件とかけ離れていないこと)
(2)自社(提案者)の強みを活かし、他社との差別化が可能かどうか(例えば外注依存の提案は、提案先から見ると信頼感や説得力に欠ける)
(3)提案内容が、提案先にとって競合他社への差別化を実現できるかどうか
(4)専門家以外でも理解できる説明か(専門用語や3文字略語の多用は好ましくない)
(5)メディア横断、メディア連携の仕組みがあること
(6)提案先とその顧客間における双方向コミュニケーションを実現しているか。
論理点では次の項目について採点している。
(1)挨拶文:導入部としてふさわしいか、聞きたくなるか
(2)現状分析・課題設定:提案先にとって納得できる分析か。実現可能な課題設定か
(3)提案概要・方針:施策選定理由は明確か。各施策の関連性を説明しているか
(4)施策内容:課題解決に効果がある施策になっているか。効果測定と報告が含まれているか
(5)スケジュール:線表形式でタスクごとに設定されているか。順序・開始時期が適切か。繁忙期などの配慮があるか
(6)費用:タスクごとに費用を算出しているか。大雑把すぎず、適切な額を提示しているか
(7)全体効果:全体で得られる相乗効果を適切に説明できているか
(8)集客効果:AISASのAttentionに相当する施策が含まれているか
(9)興味を持ってもらえるか:Interestに相当する施策が含まれているか
(10)リピートを期待できるか:リピート化の施策が含まれているか
(11)Share(拡散)に相当する施策が含まれ、評判を高めることができるか。
提案書の要旨
提案書要旨(サマリー)を記述しなさい、という設問がある。
提案書を提出する際に、その要旨を別紙として添付を要請される場合がある。ここでは、提案のタイトル、目的、施策、効果などを簡潔にまとめ、提案内容をアピールできているかどうか(提案書本体への興味を持たせられるか)を基準に採点している。
その他に、極度に適切でない用語・文章、極度の誤字脱字、極度に読解不明な文章などの場合、減点することもある。
(CS部 千葉 弘幸)