【第23期与件:リノベーション】クロスメディアエキスパート 記述試験

掲載日:2017年5月31日
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状況設定について

あなたは、首都圏にある中堅総合印刷会社のX社に勤務するクロスメディアエキスパートである。X社は、商業印刷物やSP企画・制作、Webサイトの構築・運用のサービスを顧客企業に提供している。X社にはデザインとWebコンテンツや動画の企画・制作を専門とする系列子会社があり、グループ総従業員数は120名である。

A社提案プロジェクトについて

中古マンションのリノベーションサービスを中心に展開するA社は、X社が過去に取引を行った顧客企業である。X社は、同社Webサイトの一部を手がけた実績もある。

営業担当者より、「A社は、顧客との新しいコミュニケーション戦略の検討をしている。」との報告があった。X社は、営業部門や企画部門、制作部門に所属する数名で、A社提案プロジェクトを立ち上げた。

クロスメディアエキスパートであるあなたは、本プロジェクトのリーダーに任命された。 X社は、本プロジェクトにて提案書を作成し、2017年2月26日にA社へ提出する予定である。

面談ヒアリングについて

A社について調査をすすめていった結果、X社の競合企業がインターネットやモバイル端末を活用した企画提案を行う準備をしているとの情報が入った。

X社は、営業担当者が中心となり、社長と販促担当者に面談(※ヒアリング報告書参照)を実施した。A社は、コミュニケーション戦略を立案するにあたり、社外からの優れた提案を取り入れ、実施を検討する方針である。

A社ヒアリング報告書

2017年2月1日
X社  営業部 第一課 長崎 奈央子

概要:A社からの提案依頼に伴う、ヒアリング調査
日時:2017年1月27日 10時~12時
対応者:長尾社長、関口ブランドマネージャー(本部広報室)
内容:下記に記載

1.提案へ向けて

A社は、中古マンションのリノベーションサービス事業を中心に展開している。事業所は本社のほか、営業所が5店舗、ショールーム3店舗で展開している。

創業時は首都圏に拠点を構えるパートナー不動産企業から顧客の紹介を受け、順調に売り上げを伸ばしていた。しかし、創業から2年を過ぎた頃、請負型の営業体制の限界や国内におけるリノベーションの認知度が低いことに危機感を覚えていた。

そこで、A社は2010年から自社のサービスやリノベーションの価値を生活者へ直接訴求する目的で、ファミリー層を対象にしたリノベーションサービスの自社ブランド「Re Life」を2010年に立ち上げた。また、同ブランドを体感する場としてショールーム「Re feel」を開店し、2015年には3店舗まで拡大した。

今後は、自社の理念を共有できるスタッフとともに、顧客との交流に重きを置いた活動を目指している。ショールーム「Re feel」各拠点を「交流と体験の場」と位置づけ、競合との差別化を進めている。そして、顧客とのコミュニケーション手法を確立し、関係性を重視したプロモーションの実現を模索しており、それに伴うコンテンツやメディア展開案を求めている。

2.施策の運営と実施効果測定

  • 週単位でメディア展開の実績を確認したい
  • 可能な範囲でメディア利用者のレスポンスを把握し、活用したい
  • A社の担当者は、本部広報室を中心に2名を予定

3.想定予算

  • 印刷、Web制作費、ハードウェア、ソフトウェア、開発費などで、総額2,000万円以内を想定 (初期費用のみ。以降の維持コストは別途算定として構わない)

4.施策の実施期間

  • 2017年9月1日に施策開始、2018年3月31日までを第1フェーズとして予定している

5.創業

  • 「日本の暮らしを豊かで賢く素敵にデザインする」という思いから、創業者であり現社長の長尾が建築デザイナーで現専務の三神と共同で、中古マンションに特化したリノベーションサービス企業を設立。
  • 長尾社長は大学卒業後、大手ゼネコンで新築マンションの営業に5年間従事した。
  • 日本では古い建物を壊して新築マンションを建てるスクラップ・アンド・ビルドの考え方が主流だったが、その住まいのあり方に疑問を抱き始めた。
  • 友人とパリを旅行した際に、築60年のリノベーション済み物件を見学した。一見古びた外装とは裏腹に、欧風シックでホワイトインテリアの素敵な内装と、住んでいる人の個性的で解放された世界観に魅了された。
  • 帰国後、退職して建築設計事務所や家具工房での営業を経験し、設計事務所や工務店との人脈を構築した。
  • 創業当初から数年は、大手ゼネコン時代に取引関係にあった首都圏の不動産企業(以下、パートナー不動産企業)から顧客の紹介を受け、順調に売り上げを伸ばしていた。
  • A社のリノベーションは自由度とデザイン性を顧客から高く評価されている。

6.個人向け中古マンションのリノベーション市場

  • リノベーションとは、既存の建物に間取り、水道管、排水管、冷暖房換気設備の変更などの大規模な工事を行い、価値を高めることを指す (リフォームは修復の意味合いが強く、システムキッチンやユニットバスの入れ替え、壁紙の変更など小規模な修繕)。
  • 「リノベ済みマンション」とは、業者が既にリノベーションを施した完成品の物件であり、手軽でカジュアルな住まいを手に入れたい層から支持されている。ただし、デザインの自由度はない。
  • 「マンションリノベ」とは、自らリノベーションを考え、自分なりの個性的な空間を手に入れたい顧客向けである。ただし、費用や時間などのコストは高くなる傾向である。
  • 首都圏の中古マンションの成約件数は増加傾向。築年数が20年を超える古い物件の成約も増えている。
  • リノベーション市場は今後の拡大が期待されているが、市場における認知度は低い。
  • リノベーション費用の予算の平均ボリュームゾーンは200~300万円程度である。
  • 利用者の年齢層は20~40代で世帯所得が600万円以上のファミリー層が多い。
  • 国土交通省は2017年2月から、「住宅ストック循環支援事業」として、40歳未満の人が中古住宅を購入してリフォームを行う際に最大65万円を支援する制度の申請受付を開始した。
  • 日本の住宅流通のうち、中古住宅の比率は約15%である。それに対し、他の先進諸国では70~90%程度である。日本の住宅取得は欧米に比べると新築に偏っている。

7.A社の事業モデル

  • 中古の「マンションリノベ」に特化したリノベーションサービス事業である。
  • 居住を目的とした個人の住宅一次取得者(初めて持ち家を購入する)をメインターゲットとしている。現時点では、賃貸物件のオーナーは対象にしていない。
  • 主たるサービスはリノベーションの施工であるが、物件の紹介や住宅ローンなどの相談も一括で請けている。
  • パートナー不動産企業からリノベーションを希望する顧客の紹介を受けた場合、紹介手数料として施工価格の5%を支払っている。
  • A社からパートナー不動産企業へ顧客(物件を探している)を紹介する場合は、紹介手数料を受け取っていない。
  • パートナー不動産企業に手数料の負担をかけないことで、市場には出回っていないリノベーション向きのお宝物件を優先的に紹介してもらえる。(友好関係を継続するため)

8.A社のリノベーションサービス「Re Life」の特徴

  • A社が展開する中古の「マンションリノベ」に特化したサービスのブランド名称である。
  • 「ファミリー×スモールハウス(狭い空間)×デザインリノベーション」をテーマに、首都圏特有の手狭な物件でも、家族が豊かで賢く素敵にデザインされた住まいの提供を行う。
  • 狭い間取りを広く見せるなど空間デザインの設計力が優れ、同業者からも一目置かれている。
  • 若年層から人気が高い家具ブランド「ジャーナルアローズ」と提携したインテリアコーディネートサービスが人気を得ている。
  • リノベーション費用の平均平米単価は「15万円」である。
  • 設備や内装、下地や配管・配線のすべてを解体し、撤去した上でリノベーションを行う(スケルトンリノベーション)ため、引き渡し後の瑕疵リスクが低い。
  • 首都圏に立地する50~70平米で築年数が20年を超える物件の依頼が多い。

9.ショールーム「Re feel」

  • A社のサービスである「Re Life」やリノベーションの価値を生活者へ訴求するために、首都圏の3カ所に直営ショールームを開設している。
  • 築40年の中古マンションで、間取りは60平米の3LDKをリノベーションした物件である。
  • 来場者からは、「60平米の狭い間取りが、こんなに広く感じるとは思わなかった」「子供に安全な設計に配慮しつつも、大人も楽しめる空間デザインに感動した」との声がある。
  • 各拠点には、資金計画、物件選び、リノベーションプランなどの相談が可能なライフスタイルコーディネーターが常駐している。

10.「Re Life」の利用者

  • 利用者の年齢層は20~60代以上と幅広いが、20~30代のファミリー層からの申込みが増えている。
  • 「オシャレな内装で妻や娘が喜んでいる。これから家の中での生活が楽しく過ごせそう。(20代の男性) 「築25年の物件を購入して8年経ったけど、大きな不具合が出てなくて安心して住めています」(30代女性)など、デザインや安全性の評価が高い。
  • ショールーム「Re feel」来場者の調査をした結果、住宅観は「便利で快適な生活の土台となる」「自分の個性やライフスタイルを表す」、予算以外に重視する点は「通勤、通学、生活の利便性」との回答が多かった。一方、投資や資産価値への関心度は低い。
  • 来場者は、リノベーションに関心を持っているものの、新築、リノベ済マンション、マンションリノベのいずれかで悩んでいるアーリーマジョリティー層が中心である。

11.イベント

  • 「リノベーション向きの掘り出し物件を探すツアー」や、A社が施工した顧客の協力による「完成物件見学ツアー」を無料で開催している。
  • 参加者からは、「リノベーションに対する具体的なイメージができた」「1日で複数の物件を周れるので効率的」など参加者の評価は高い。
  • 参加者数が最少催行人数に達せず中止となるケースがあり、不満の声もある。
  • 2017年5月からは、「物件の探し方」「リノベーションの基礎」「中古物件の耐震性」「資金計画」などのテーマのセミナーを開催する予定である。

12. 人事体制

  • A社は5年前に、スタッフに対する十分な育成や理念の共有ができず、大量離職を招いた経験があり、人事制度を見直す一環として10の行動指針を示した。
  • 特に重視しているのが、「真面目であれ」「誠実であれ」「顧客バカであれ」であり、顧客や社内の同僚に対して「いい人、優しい人、気持ちの良い人」でいることを徹底している。
  • 営業スタッフの評価は、顧客満足度アンケートの結果を重視している。アンケートは顧客が本社へ直接送付する仕組みを採用している。(担当スタッフを経由しない)
  • 「宅地建物取引士」「ファイナンシャルプランナー」「インテリアコーディネーター」など不動産業に関わる資格の取得を奨励している。受験費用の補助や社内勉強会を開催しており、多数の有資格者が在籍している。
  • 不動産の業界団体からA社の人事制度や育成の取り組みについて取材を受け、業界紙に記事が掲載され、反響があった。

13.販売促進

  • 首都圏に隣接する県内のファミリー向け賃貸アパートに折り込みチラシとポスティングを行っているが、費用対効果に疑問を感じている。
  • Webサイトで、「イベント情報」や「リノベーションサービス」「ショールームのアクセス情報」を掲載しているがアクセス数は伸びていない。
  • A社主催のイベント参加者の満足度は高く、複数回参加している方は高い確率でリノベーションサービスを利用している。
  • イベント参加者には、事前に「住所等の属性情報」「世帯収入」「購入予算」の申告を求めている。
  • イベント参加者へ定期的にイベント情報を一括メールで発信している。
  • 小冊子「リノベーション虎の巻」をショールーム内で配布している。内容は、リノベーションの基礎知識の他、物件の選び方、つくり方、顧客事例である。
  • ブランド力向上を目的に、リノベーション専門誌「Life as House」へ広告を出稿している。

14.A社の競合(B社)

  • 首都圏の中古マンションの買取再販業者であるB社は、安価で購入した物件にリノベーションを施した「リノベ済みマンション」を顧客へ販売し、業績を伸ばしている。
  • 配管や配線、間取り替えなど大規模な工事は行わないが、内装(クロス、フローリング、水回り)は、流行の設備やデザインを使用し全面的にリノベーションしている。
  • 物件込みの価格で販売しているが、リノベーションにかかる費用は300万円程度でA社のサービスと比べて安価である。
  • 内装はきれいでも下地や配管・配線など、顧客から見えにくい部分の瑕疵リスクはA社のサービスに比べると高い。
  • 大手不動産情報ポータルサイト「IE-SUMU」に物件情報を掲載している。問い合わせの多くはこのサイトを経由している。
  • 大手検索サイトの「検索連動型広告」に出稿し、「リノベーション」「中古マンション」の検索キーワードで上位に表示されている。
  • 公的機関が主催するリノベーション動画コンテストで入賞した。

15.今後の方針

  • 20~30代の住宅一次取得者で子供が1~2人のファミリー層をメイン顧客とする。
  • パートナー不動産企業からの顧客の紹介に依存するのではなく、A社のサービスやリノベーションの価値を訴求し、ブランド化を図る。
  • パートナー不動産企業との良好関係を維持するため、A社が開拓した顧客(物件を探している)の無料紹介は継続的に行う。
  • 顧客とのリアルなコミュニケーションの場として、ショールームや各種イベント参加者の増加を目指す。
  • 専門性が高く顧客志向の強いスタッフの充実も、リノベーションの価値を訴求する重要な要素と考えている。
  • リノベーション専門誌「Life as House」の編集者が広報担当として入社することが決まり、今後の重要な戦力として考えている。
  • 住宅を提供するのではなく、「生活者の豊かな生活」を創り上げることを使命と考えている
  • 大阪、名古屋にショールーム「Re feel」を開店予定。
  • 第三者割当増資による1億円の資金調達を実施し、マーケティング強化やショールーム開設の加速を計画している。

A社の概要

法人名:株式会社A
設立:平成19(2007)年
従業員:50名
資本金:80百万円
売上:900百万円(2016年3月期)
施工数:100件(2016年3月期)
所在地:東京都渋谷区(本部)
役員:代表取締役 長尾 完治 専務取締役 三神 健一  常務取締役 青名 リカ
事業:中古マンションのリノベーションサービス事業
店舗数:ショールーム(3店)、営業所(5店)

企業沿革

2007年:株式会社A設立
2010年:ショールーム「Re feel」表参道(1号店)開店
2012年:家具ブランド「ジャーナルアローズ」と提携
2015年:ショールーム「Re feel」3店舗達成
2017年:大阪、名古屋にショールーム「Re feel」を開店予定

経営理念

暮らしを賢く素敵にデザインすることで、心の豊かな社会づくりに貢献する

社長プロフィール

長尾 完治(ながお かんじ)

  • 学歴:1997年にA大学の建設学科を卒業
  • 職歴:大手ゼネコンの営業職に従事(5年間) 建築設計事務所、家具工房で営業に従事(4年間) 2007年株式会社A設立
  • 家族構成:妻(37歳)は、趣味を兼ねて「整理収納アドバイザーとしての講師業」に従事 長男(7歳)、長女(5歳)
  • モットー:「人と人とを言葉で紡ぎ、心を紡ぎ、ご縁を紡ぐ」
  • 趣味:弓道、絵画鑑賞、カフェめぐり

A社損益計算書(2015年度、2016年度)

単位:千円
  2015年度 2016年度
売上高 600,000 900,000
売上原価 420,000 585,000
売上総利益 180,000 315,000
販売費・一般管理費 198,000 270,000
営業利益 ▲18,000 45,000
営業外収入 3,000 4,500
営業外費用 18,000 27,000
経常利益 ▲33,000 22,500

設問

問1 A社の顧客コミュニケーションにおける課題を優先度の高い順に3つ記述しなさい。

(1)課題1: (2)課題2: (3)課題3:

問2 問1の課題を解決するための具体的なコミュニケーション施策を箇条書きで記述しなさい。

ターゲット、コンテンツ内容、使用するメディアと選定理由についても記述しなさい。 (1)コミュニケーション施策 (2)ターゲット (3)コンテンツ内容 (4)使用するメディアと選定理由

問3 A社に提出する提案書を問1、問2の内容を踏まえて記述しなさい。  記述形式:A4縦・横書き・3枚

問4 A社に提出する提案書要旨(サマリー)を問3の内容を踏まえて記述しなさい。