単にink on paperで、コンテンツ、情報などを紙にアウトプットするだけでは、特に商業印刷分野における印刷会社が市場を拡大していくことは難しくなっている。その対策の一つはクロスチャネルに対応して、コンテンツや情報を発信していくことだろう。そのためには印刷会社は新たな挑戦を行っていく必要があり、パーソナライズ対応がキーワードになるだろうということで、page2017の経営シンポジウムでは印刷会社などの取り組みなどを紹介した。
今のメディア接触状況を見ると、スマートフォンの普及によって、生活者はいつでもオンラインという状態がふつうになっている。つまり、情報の受発信においてはスマホが起点になるという可能性が高くなっているといえよう。そういう中で、24時間あらゆる情報に接する生活者は、企業から毎日のように大量に届くマス的な情報に対して反応しにくくなっているということが指摘されている。そこで、受け取った情報をきちんと理解してもらい、行動を促すには生活者に「自分ごと」と感じられる情報を提供することが重要になる。したがって企業は売り上げを上げる、新規顧客獲得、顧客満足度向上、ブランディングのためにパーソナライゼーションを活用し始めている。各種の調査によると、マーケッターはパーソナライゼーションに注目している。その理由として例えばダイレクトメールの活用では、リード創出、受注、トラフィック創出でパーソナライゼーションを使用したほうが効果的ということが明らかになっているからである。
実際にパーソナライズされた印刷物を生産すること自体は印刷会社にとっては対応できないことはない。デジタル印刷機の導入によってバリアブル印刷などのノウハウを積み重ねつつある会社は少なくないだろう。課題があるとすると、どのようにセグメントしてパーソナライズのデータを作るのかということになるだろう。この部分は従来型の印刷会社にとってはハードルが高いといえる。そこで、page2017ではマーケティングオートメーションを導入してパーソナライズに対応して生活者視点のマーケティングを行うパートナー企業とアライアンスを組んで、DMを印刷・発送する印刷会社がどのように対応しているのかを紹介した。そこでは顧客データの持ち方から納品の設計までさまざまな要素が必要になっている。また、スケジュール、見積もり、仕様設計を一品ごとに行うのでなく、対応可能な基盤を作り、一括したサービスとして提供する必要がある。さらに情報の変化が激しいのでそれに対応できるようにPDCAを継続していくことが重要になる。
JAGAT info6月号ではpage2017報告の最後として経営シンポジウムとなる基調講演「印刷の新たな挑戦~クロスチャネルとパーソナライズを考える」を掲載しますので、ぜひご一読ください。