印刷加工技術×クリエイター×マーケティングをコーディネートする

掲載日:2017年6月16日

「ひとつでも“0”だと価値もゼロ」

印刷業の多くは受注型である。成熟産業ともいわれ、マーケットの拡大が難しい中、受注拡大のためには、価格や納期による競争(過当競争)に向かうか、付帯サービスや特別な技術による競争(付加価値競争)戦略に打って出るかの大きく二つに分けられるであろう。どちらも厳しそうではあるが、可能性や業界の活性化にも繋がりそうな選択としては、後者の付加価値競争であろう。

特殊印刷≠高付加価値(顧客からみれば何が価値か?)

印刷表現技術において付加価値を得る手法として特殊印刷がある。たとえば箔を使って光るメタリックを表現することができる。箔を使うことで色域表現が広がったことになるが、それだけで必ず印刷がもたらす効果としての価値が上がるのだろうか。言い換えれば顧客から高付加価値を認められ、きちんと対価を得られるのであろうか。

箔押し印刷は、本来、紙に金属の箔を圧着するための印刷技術である。箔を圧着するには金属型を熱して紙に圧力をかける。その技術精度が向上するとともに、箔押しと同時にエンボスなどの効果を与える箔押し加工、あるいは紙に凹凸をつけるだけのエンボス加工も発達してきた。例えば、金箔を箔押し印刷すると金のメタリック表現が可能だ。そのコストは、箔を使う面積によって決まる。勘違いしてはいけないのがオフセット印刷のようにインキ量でのベタ刷り割り増しのような考え方は無い。転写フィルムシートを使うため、小さな線画データでも広く点在していればコストは上がる。使用フィルムの面積により加工料金が変動する。
特別な印刷製品には、従来の印刷業の積算見積りではなく、価値に対する絶対プライスを付けなくてはならない。そして、価値とは技術的な視点だけではなく顧客のニーズにあったオーディエンスに対するコミュニケーション効果である。

その効果で外せないことが感動や驚きなどの感性に訴えることだ。技術者とクリエイターが上手く連携してクライアントの意図とオーディエンスの欲求を満たすのである。
そこで、必要とされるのがマーケティング感覚を持ち、技術者とクリエイターを結び付ける人材だ。結婚?で言えば、仲人のような位置づけである。両方をよく理解して結びつけるのだ。これが、コーディネートでありコーディネータの役割だと言える。この結び付け方が上手くいけばいくほどシナジー効果は高い。まさに掛け算だ。反対に、どちらかが“0”でも、どれかが欠けても効果は“0”になる。高い付加価値を生み出すには、結びつける人材、コーディネータが鍵を握る。
プリンティングコーディネータ養成講座第20期(JAGAT主催)は、様々な印刷技法、素材、作品、人との出会いの場。今年もブラシュアップして10月4日から開催する。

(CS部古谷)