先日29連勝を達成した14歳の最年少プロ棋士、藤井聡太四段。彼の強さの秘密は「デジタルとアナログのいいとこ取り」である。
AIに凌駕されない分野を生かして
ロボットやAIなどに代表されるテクノロジーの進化により「なくなる仕事、消える職業」、つまり機械に代替される仕事が増えると言われている。将棋の世界でも、プロ棋士のタイトル保持者が将棋ソフトウェアに敗れるなど、AIが人間を凌駕しているが、プロ棋士という職業が必要なくなるかというとそうではないだろう。なぜか。
将棋には、その局面で最も良い手である「最善手」があり、いかにそれを導き出すかが重要となるが、現在のAI将棋ソフトでも、対局上の全ての局面におけるパターンから最善手を選択(全幅探索)することは出来ない。したがって、ある程度指し手を絞り込む(選択探索)のだが、この絞り込みの基準が駒の価値(強さ)である。AI将棋ソフトは、駒の価値を数値化し最善手を選択するが、人間の場合はこの選択においては、駒の強さだけでなく、相手の心理を読んだり、過去の対局から伏線を張るなどの感性が働く。
デジタルマーケティング施策の最善手を打つのは人間
この最善手の選択を、マーケティング施策に置き換えて考えてみると、まず駒の価値の数値化がリード(見込み客)のスコアリングといえる。駒の価値には、元々の動き方の違いだけでなく、局面によっても差が生まれる。それと同様にリードの価値も、属性情報だけでなく、行動による差を考慮しなければならない。そしてそのスコアリングに基づいてメール配信、TELアポなどの手法を決め、最適なタイミングで行うことが最善手の選択といえる。
また、「人工知能と経済の未来」の著書である井上智洋氏によると、AIに負けない領域としてマネジメント(経営)、クリエイティブ(創造性)、ホスピタリティ(もてなし)の3点を挙げている。マーケティング施策においても、eメールよりも創造性やホスピタリティにあふれたダイレクトメールを組み合わせて送付することで、リードの心を動かすことが出来るかもしれない。そしてこうしたスコアリング、配信のタイミングとツール選定の判断は、すべて人間が行うということである。デジタル活用が進むマーケティング分野にも、アナログの出番は少なくない。
デジタルとアナログの「いいとこ取り」
先日28連勝を達成した14歳の最年少棋士、藤井聡太四段は、AI将棋ソフトの戦略研究を行っているという。また藤井聡太四段は幼いころから詰め将棋(将棋のルールを用いたパズル、王手を繰り返すのがルール)で腕を磨いてきたが、これにAI将棋ソフトの最善手の選定戦略を学ぶことで、序盤から中盤の構成力を強化しているという。いわばデジタルとアナログのいいとこ取りだ。AIの進化の速度はめざましく、AI将棋ソフトvs人間の戦いはもはや終わったと言われているが、デジタルの良さを吸収した人間(やっぱり藤井聡太四段?)が、AI将棋ソフトを打ち破る日が来ないかと淡い期待を抱いてしまう。
8/24(木)、8/25(金)に開催する「JAGAT Summer Fes 2017(夏フェス)」でも「デジタルとアナログ(リアル)の融合」を追求していくが、お互いの得意分野を生かして、最適な施策を講じていけばよいのではないか。すなわち膨大なデータ分析やスピードはデジタルに任せ、クリエイティブやホスピタリティの部分で、アナログでも出来ることを行う。まだまだアナログの生きる道は十分に残されている。そんなことが実感出来る2日間にしたいと思う。
(CS部 堀 雄亮)