2月のpage2017では印刷会社が発行主体のフリーペーパー展を開催した。フリーペーパーは印刷会社のポテンシャルを伝えるのに最適な印刷物の一つである。また、ローカリズムの時代の地域メディアとしても再評価されている。
全国の印刷会社フリーペーパーを展示
page2017(2月8~10日・サンシャインシティ)では、全国の印刷会社が発行主体となっているフリーペーパー39紙誌を展示した。多くの人が訪れ、立ち止まり、手に取った。フリーペーパーは、印刷会社の地域における役割の本質、単に製造業にとどまらない現代印刷会社の事業領域の広がり、そして印刷メディアの魅力を訴求するのに最適な印刷物の一つである。企画力・営業力・デザイン力・取材力・技術力など総合力の産物であるからだ。
印刷会社のフリーペーパーの特徴は「多彩」
印刷会社が発行主体の全国のフリーペーパーからは、顧客のコンテンツを注文どおり美しい印刷物に仕上げる従来型の製造業的姿勢ではなく、印刷会社が創造的にコンテンツの制作側にまわるような地域情報発信の担い手としての地位を築きつつある様子が浮かび上がる。印刷会社のフリーペーパーを一言で表現するなら「多彩」であろう。記事は各地の地域性を反映、収入源は広告費以外に幅広く分散、発行の目的は営利もあるが地域活性への貢献意欲も強く、地域社会との連携によるビジネスモデルも見られる。
ローカリズムの時代の地域メディア、そのあり方を探る
JAGATは印刷会社が発行主体のフリーペーパーについて興味深い研究領域と考えている。フリーペーパーは地域の広告費を発行原資とし、地域の記事をコンテンツとし、地域の印刷会社によって生産され、地域の読者によって読まれる、という文字どおりの地域メディアである。地域密着産業として全国に26000事業所を展開する印刷会社が各地で発行するフリーペーパーを見るのは興味深い。フリーペーパーの発行実態に近づくことで、印刷会社の地域社会における新たな可能性が見えてくるだろう。そして、従来型の全国雑誌流通網が衰退する一方、ローカリズムが勃興する現代社会における地域メディアのあり方を探るのにも極めて有用であるに違いない。
フリーペーパーが映し出す印刷会社のポテンシャル
フリーペーパーは出版取次を介した全国的な流通網に乗らないため、配布エリア以外の実態や全体像を掴みにくい。広告会社や新聞社が発行するフリーペーパーについては知られているものも多いが、第3のフリーペーパー発行者としての印刷会社は、発行主体としてどのような存在なのだろうか。新陳代謝の激しいフリーペーパー市場において中長期持続的に発行できているフリーペーパーの平均像と特性はどのようなものか。JAGATでは定量的・定性的に捉えるべく、通算3回の調査をしている。たとえば、フリーペーパーとデジタルメディアの連携に関する調査結果も興味深い。実に97%が何らかのデジタルメディアとの連携を果たしていたことは印刷会社の情報加工技術の高さを示していよう。このような調査研究結果を少しずつ明らかにしていく予定である。最後になるが、調査研究に協力してくれたすべての方に感謝申し上げる。
(研究調査部 藤井建人)