データを視覚化するさまざまな手法

掲載日:2017年7月10日

グラフィック(視覚表現)は、文字と並んで、情報伝達の重要な要素である。統計データや物事の相関関係などを伝えたい時、事細かに文章で説明するよりは、グラフやチャートを一つ提示した方が、はるかに伝わりやすい。

JAGATでも、数々のレポートを発行しているが、写真、表、チャート、グラフなどを適切に掲載し、読者の理解が深まるように心がけている。

今春に発行した「印刷界OUTLOOK 2016/2017」を例にとろう。これは印刷・同関連業にまつわるさまざまな統計を元に印刷業界を概観する冊子であり、各ページに2点ずつ図版を掲載している。

事業所数については「印刷・同関連業の事業所数と構成比(2014年)」というグラフを掲載している。

印刷・同関連業の事業所数と構成比(2014年)

このグラフの内容を文章で説明すると以下のようになる。

2014年 の印刷・同関連業の事業所数と構成比は多い順に、印刷業2万735(構成比80.2%)、製本業1795(同6.9%)、印刷物加工業1684(同6.5%)、製版業1383(同5.4%)、印刷関連サービス業246(同1.0%)となっている。

文章よりもグラフの方が直感的に構成比を把握できることがわかる。

このように円グラフは、構成比を把握するために非常に便利な手法の一つである。
しかし、構成比を表す手法は、円グラフだけではない。

たとえば、円グラフを応用して、以下のような表現も可能だ。
印刷物を象徴する書物のイラストレーションを使い
一つの印刷物を作るために、どんな業種が関わっているかを示してみた。

印刷・同関連業の事業所数と構成比(2014年)イラスト

また、アイコンの数で構成比を示すというやり方もある。
事業所数の違いとともに、業種どおしの関係も示してみた。

印刷・同関連業の事業所数と構成比(2014年)イラスト2

このように、5業種の構成比というシンプルなデータであっても、
さまざまな表現が可能である。

多様な要素が入り組んだ事象を解説する場面では、グラフィックの構造も複雑になる。
いかに伝わりやすく、魅力的なグラフィックを作ることができるか、それがデザイナーの腕のみせどころであろう。

昨今、 情報、データ、知識を視覚的に表現するインフォグラフィックスの手法が注目され、アクセスマップ、鉄道の路線図、標識、年表、新聞の特集面など、あらゆる場面に活用されている。
特に 東日本大震災以降、デザインの社会的な意義が追求されるに伴い、インフォグラフィックスへの関心も高まっているという。

「日本タイポグラフィ年鑑」にも インフォグラフィックス部門があり、2017年度は、『終わり見えぬ汚染水』(朝日新聞社 報道局 デザイン部)が受賞している。

インフォグラフィックスは、データをただ視覚化すればよいというものではなく、みせるべきデータを選びだし、見やすく美しい形態に編成しなおしていく。 デザインの中でも、特殊な技能が要求される分野だ。

世界のあらゆる事象の断面を直観的に伝え、あるときは人々の行動の手助けとなり、またある時は問題提起の手段ともなるインフォグラフィックスの役割は今後ますます重要になり、その担い手の育成も必要になるだろう。

(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)


page2018 ワークショップ「インフォグラフィックスの基礎と活用法」

2018年2月8日(木) 15:45〜17:45
池袋サンシャイン ワールドインポートマート5F
講師:木村博之氏(チューブグラフィックス 代表取締役)

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(2017.9.13開催 JAGAT印刷総合研究会での木村氏の講演概要)