印刷市場の縮小によって、会社を継続的に維持、成長させていくには、印刷物の製造だけを事業にしていては厳しい状況になっている。そうなると、印刷以外の脱印刷物製造の事業にも目を向ける必要がある。
既に多くの印刷会社が印刷業以外の市場に進出しているのは周知の事実である。その場合にリスクの少ないのは、印刷と全く関係のない分野ではなく、印刷に密接に絡む分野や印刷から派生する事業分野、印刷発注と同じお客様の印刷以外の仕事になるだろう。広告企画・制作(動画などを含む)、マーケティング、セールスプロモーション、ウェブ制作、イベント企画やフルフィルメントといったロジスティクス分野などが思い浮かぶ。
しかし、印刷機を設備する印刷会社は印刷機を稼働させないことには、主要な経営資源の活用が不効率になる。となると、脱印刷専業と言いながら最終的には印刷物に落とし込むような施策を志向しかねないわけで、この辺のバランスをいかにしてとっていくかは各社独自の状況に合わせての戦略にならざるを得ない。
つまり、脱印刷専業を志向するにしても、各社の設備や人員などの経営資源状況によって当然のことながら正解は一つではなく、こうすれば必ず成功するという方策があるわけでもないだろう。
あるイベントを起ち上げて成功・定着させた経営者は、印刷会社の印刷物に落とし込むという発想を脱しないとならないと語る。このイベントでは出店料や物販などで収益を上げるビジネスモデルを作っており、最終的に印刷機を回して印刷物で儲けようとしたら成功しなかったろうと語った。
一方で先日、大東印刷工芸から社名変更した大東マーケティングソリューションズの花﨑博己社長は、印刷物の可能性を訴求するために、「顧客視点」の重要性を指摘する。
同社はマーケティングを志向して事業展開を行ってきており、既に印刷以外の売り上げ比率も半分近くなっている。しかし花崎社長は、印刷物はメディアとしての付加価値が非常に高いし、さまざまな工夫することによってマーケティング的にも高い効果を生む可能性があると語る。
そのためにも顧客視点に立って、印刷物の有効性を考え、顧客課題を解決する場合に印刷物がもっとも最良の手段であるなら、その効果をきちんと説明できないとならないと語る。同社が行っているのは単に印刷サービスを提供するのではなく、マーケティングソリューションとして説得力ある印刷サービスの提供ということなのだろう。
脱印刷専業を志向する上で、両氏ともリスクを恐れて立ちすくむのではなく、果敢にチャレンジすることの重要性を語っている。もちろん、そのためにはきちんとした戦略を持つことで、リスクヘッジの工夫は不可欠になるだろう。
JAGATでは2015年に発行した『未来を創る–THIS POINT FORWARD』以来、マーケティングの必要性を訴えてきた。特に販促などに関わる商業印刷分野では、デジタルマーケティングの隆盛という状況の中で、これらと連携する形で紙の付加価値を訴えていかないと、ますます市場は先細りになることが予想される。今後、印刷以外の市場を開拓する場合でも、マーケティングは重要なキーワードになるのは間違いない。
(JAGAT info編集)
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