「ing思想」の具現化に向けて

掲載日:2014年11月4日

社員全員で情報を共有しベクトルを合わせたうえで、社員ひとりひとりが考えて「ing」を実践することが昨今の印刷経営に求められている。

「ing思想」とは、JAGATの創始者である塚田益男氏が1980年代前半に提唱した印刷経営思想である。印刷需要が成熟化し、物的生産性の向上が必ずしも価値的生産性の向上をもたらさない、言い換えると、印刷価格=原価+利益という図式が成立しないときの経営思想である。

「ing思想」では、価格はあくまでも顧客の満足度に応じて決められるべきものであり原価とは直接的関わりがないものである。営業のひとつの重要な役割は、日常的な努力によって顧客の満足度、信頼度を高めて、その価値も含めた価格を顧客に評価してもらうようにすることである。

price(価格)、あるいはcost(原価)はそれぞれひとつの状況あるいは結果を示すに過ぎないが、そこに「ing」をつけることによって、それらは目標達成への意志と行動を意味することになる。

価格とは、「原価+利益」によって算出されるだけの静的なものではなく、営業の努力次第で変わり得るものである。つまり、価格は単なる「Price」としてあるのではなく、営業の日常的行動、つまり「ing」の成果を含めて顧客に納得してもらえるように交渉して決めるべきもの、「Pricing」すべきものである。
一方、生産現場は常に生産性向上によって原価低減に努力すべきであり、その努力は価格の高低とは関わりのないものである。原価(cost)は、ひとつの状況下においてある水準にあるが、さまざまな工夫、行動、つまり「ing」によってその水準を下げていくこと(costing)が生産現場の重要な役割である。

社員が自ら考えてpricing、costingという行動をとることが企業の組織活性化と利益確保の源泉となる。 これを「ing思想」という

そして、「ing思想」を実現するために不可欠なのが、正しい情報、正確な現状把握である。代表的なマネジメント手法としてPDCAサイクルがあるが、Plan(計画)の前にSee(見る)、Think(考える)を加える考え方もある。計画を立てる前に現状をきちんと見て、どうすべきかをじっくりと考えたうえで、計画を立てるということである。

目標が漠然としていては、具体的な行動にはつながらない。原価削減といっても現状の原価がわからなければ、なかなか具体策が打てない。現状に対しての改善結果を数値目標として設定して、はじめて「計画」となる。

社員全員で情報を共有しベクトルを合わせたうえで、社員ひとりひとりが考えて「ing」を実践することが昨今の印刷経営に求められている。

成功のポイントとしては、①売上重視から付加価値重視へ、②受注一品別の収支把握、③先行管理が挙げられる。

CS部 花房 賢

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