働き方改革と見える化

掲載日:2017年8月21日

労働時間の短縮と賃上げを同時に実現しようという「働き方改革」には生産性向上が不可欠である。

働き方改革が話題になっている。
労働人口の減少に対応する多様な働き方の推進や非正規雇用の処遇改善などがうたわれているが、一番の目玉は長時間労働の是正であろう。
法改正により罰則規定つきで時間外労働時間の上限が設定されるという。
また「官製春闘」という言葉があるように政府主導の賃上げの働きかけもある。

働く時間を短くして、かつ賃上げを行うことで少子化に対応し、かつ経済を活性化させるという意図であるが、これを可能にするためには時間当たりの労働生産性の向上が不可欠となる。

従来の印刷業界では、納期に間に合わせることと間違いのない品質の製品を納めることが最優先で、そのためには長時間労働、ときには徹夜することもやむなし、それが武勇伝のように語られることもあったように思う。

長時間労働は悪という価値観が世の中に浸透してくると、業界の慣習だから仕方ないというわけにはいかなくなる。人手不足の折り、人材の採用や定着にも影響してくるだろう。

「見える化」とはコストを細かく見えるようにして、受注一点あたり、かつ工程単位で損得がわかるようにする仕組みだ。工程ごとの作業時間からみなしの原価を算出する。どのような作業にどのくらいの時間をかけているのか、受注金額に対して費やされた作業時間は妥当なのかどうか。現状を正確に把握することを改善の足がかりとする。

見える化による改善効果が特に見込めるのがDTP制作部門である。DTP制作部門はクリエイティブ性が求められることや入稿や校正の戻しのタイミング、あるいは校正の回数など顧客の事情に左右されることが多く主体的なスケジュール管理が難しい。そのため印刷現場などに比べて時間管理がゆるく長時間残業が常態化しているケースが多々みられる。時間管理により目標時間を意識して作業することにより、生産性の向上や効率を落とす原因の排除、あるいは作業実績をもとに顧客と価格交渉を行うといった取り組みにより収益性が改善される。

また、見える化を行うと個人や設備単位での時間あたり付加価値の集計が容易となる。

(付加価値=売上-材料費-外注加工費)

 

1人1時間あたりの付加価値額は生産性の評価指標として非常に重要である。DTP制作では材料費はほとんどないので、売上額≒付加価値額と考えていいだろう。
営業が5万円の案件を受注したとして、DTP制作の作業時間が12時間かかったとすると、時間当たり付加価値は4,167円。2時間短縮して10時間で仕上げたとすると5,000円となる。
1人1時間あたりの付加価値額を増やすことが賃上げの原資となる。経営者だけでなく社員も意識すべき数値であり、また、そうなるのが「見える化」の効用でもある。

 

JAGATでは、見える化の立ち上げのサポートと取り組む企業の相互交流を行う「見える化実践研究会」を立ち上げます。

8/23に東京(夏フェス内)、8/27に大阪(西部支社 TEL:06-6352-6845)で説明会を行います。