ブランドオーナーからプリントメディアやWeb制作のコンペ案件に声がかかる印刷企業も増えている。そこで勝つには3つの重要なポイントがある。
今日の印刷企業の多くは、印刷のみならず企画やデザイン、Web制作機能の強化を図ることで提案の幅を広げている。そうした背景もあり、ブランドオーナーからプリントメディアやWeb制作のコンペに声がかかる印刷企業も増えている。それはブランドオーナーの視点で印刷業への期待が高まっていると言っても過言ではない。
一方、印刷企業の経営者からは、「コンペで勝てない」などの声を聞くことも多い。勝てなければ、1円も売り上げが立たない。そればかりか、コンペに要した時間や人件費は水の泡となり、中小規模の印刷企業にとっては死活問題となる。
そうした声に応えるため、印刷企業がプリントメディアやWeb制作のコンペに勝つための講座として、株式会社ブライ・プロジェクトの布施貴規氏を講師に招き、「コンペで勝つ!企画提案の3つの極意」セミナーを開催した。印刷企業から本テーマに対する関心が高く、営業パーソンが中心に、全国各地からの参加があり、すぐに定員を超える申込みがあった。「コンペ」は地方の印刷企業にとっても非常に関心の高いテーマであることが伺える。
●ヒアリングが勝敗を決する重要なポイント
講座ではコンペの勝率を高めるために必要な要素として、以下3つのポイントに絞って解説した。
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Point.1「引き出すヒアリングと与えるヒアリング」(情報戦)
Point.2「生み出す企画と見せる提案」(企画提案)
Point.3 「惹きつけるプレゼンテーション」(プレゼンテーション)
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「コンペで勝つ!企画提案の3つの極意」は講義と演習を交えた体感学習方式を採用している。情報として知識をインプットするだけではなく、受講者同士が議論し合うことで多くの“気づき”を肌で感じてもらうことが目的だ。今回は3つのポイントで特に重視されている「ヒアリング」を中心に報告する。
冒頭で布施氏から受講者へ「コンペで負けた理由」について問い掛けた。多くの方から「他社と比べてデザインや企画が良くなかったと言われた」との回答があった。しかし、布施氏は「企画やデザインは表面的な敗因にはなるが、その多くは体のいい断り文句で、クライアントの要求を適切に反映できなかったことが本当の理由である。つまりそれは、営業がクライアントから必要な情報を収集できていないことが真の問題である」と指摘し、営業のヒアリングの重要性を説いた。
また、体感学習として1グループ3人のチームに分け、それぞれ「クライアント役」「提案役」「観察役」に任命し、コンペ案件におけるヒアリングの演習を行った。実務では営業の立場で考えていたコンペだが、研修を通してそれぞれの立場を経験することで、「クライアントは営業からヒアリングを受けた際に何を感じるのか」「客観的にクライアントと営業のやりとりを見て何を感じるのか」など、客観的な視点で、我が身(営業)を振り返ることができたのではないだろうか。ヒアリングについて重点的に解説した後、クライアントの要求を満たすための企画の方法や、心を動かすプレゼンテーションの手法について演習を交えながら紹介した。
研修講座の受講者アンケートを見ると、多くの受講者からは、「講座としての結論が気持ち良いくらいにハッキリしていて、頭にスッと入った」「企画やデザインにだけ注力していたが、ヒアリングが最も重要であることが理解できた」という意見が寄せられ、9割以上の方から実務で活用できる講座であると回答があった。
●人が配慮しないところに配慮する営業
コンペにおいて、斬新な企画やデザインを何十年も生み続けるには限界がある。それができるのは一部の天才しかいない。そこで勝負するのではなく、凡人としてコンペに“勝ち続ける”ためには、「ヒアリング力(情報戦)」で勝負を決める必要がある。顧客は何かしらの目的で、プリントメディアやWebを制作する。その目的を確実に把握した上で、解決できる企画やデザインと顧客の心に伝わるプレゼンテーションができれば、選ばれる可能性は格段に高まる。
最後に布施氏から「凡人のままコンペに勝つ方法を考えてください。ただし、ただの凡人ではだめです。ヒアリングや企画提案、プレゼンテーションにしても、人が配慮しないところを配慮する凡人になってください。そうした意識を常に持てば自ずとコンペで勝つことができます。」と熱いメッセージで締めた。
現在のコンペは、競合が印刷企業に限らずWeb制作や大手広告代理店など、業界の垣根を越えた熾烈な争いになっている。そこで勝ち抜くのは言葉で言うほど甘くはない。ただ、印刷企業がコンペで勝つケースが増えることで、企画やデザインに強い印刷業としてブランドオーナーからの期待も高まり、結果として印刷業界全体のブランド力が高まるのではいだろうか。
CS部 塚本直樹
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