9月13日開催の研究会「デザインで情報を可視化する〜インフォグラフィックスの動向」に登壇する永原康史氏と木村博之氏のお仕事から、インフォグラフィックスの魅力の一端に触れてみよう。
2017年9月13日(水)にJAGAT印刷総合研究会は「デザインで情報を可視化する〜インフォグラフィックスの動向」を開催する。
講師に招く多摩美術大学教授・永原康史氏と株式会社チューブグラフィックス 代表取締役・木村博之氏はいずれも、インフォグラフィックス分野に造詣が深いベテランである。
お二人が手がけた作品や著書を紹介する
永原康史氏
多摩美術大学情報デザイン学科で教鞭をとる永原氏。
フォントや組版に関心を持つ方は、モリサワWebサイトの「文字の手帖-文字を組む方法」をご覧になったことがあるだろう。
このように永原氏はタイポグラフィの分野の知見を持つ一方、情報デザインの研究と実践にも取り組んでいる。
2016年発行の『インフォグラフィックスの潮流』(誠文堂新光社)は、ロンドンの都市交通図、近代グラフの発明、2000年以降の大量情報の時代など、情報視覚化の歴史を多方面から語る労作だ。豊富な図版を眺めているだけでも、インフォグラフィックスの面白さ、それを作り出した先達の知恵に触れることができる。
また、今年2017年6月に発行されたばかりの『ISOTYPE[アイソタイプ] 』(ビー・エヌ・エヌ新社)で永原氏は監訳を務めている。
本書は、ピクトグラムの元祖とされる「アイソタイプ」を開発したオットー・ノイラートの著書『International Picture Language』(1936)、『Basic by Isotype』(1937)に『Modern Man in the Making』(1939)の全図を収録した、日本オリジナルの合本版である。
永原氏は、同書に「アイソタイプの科学―ふたたび世界をみる窓として」と題した巻頭言を寄せている。ノイラートの一生と思想、アイソタイプ開発や普及への活動がコンパクトにまとまり、本書を読み進めるための良きみちびきとなっている。
この中で、第一次大戦と第二次大戦の間を生きたノイラートらが見た夢について
「彼らがつくろうとしたのは、個人が国家を超えて共に生きるための道具である」
と述べ、文末をこう結んでいる。
「国家と国家、国家と私達との関係がふたたび問われている21世紀初頭に、アイソタイプの初めての邦訳を送り出すことは、けっして偶然ではないだろう。」
1945年に没したノイラートの存在が、決して遠いものではなく、将来を作っていく私たちとつながっていることに気づかせてくれる一文である。
木村博之氏
木村氏は、ユニークな経歴の持ち主だ。
大学の地理学科で学んでいるうちに、地図をデザインすることに興味を持ちはじめ、「ぴあMAP」などを手がけた地図デザイナー、森下暢雄氏に弟子入りする。
その経歴の通り、木村氏が最も得意とするのは地図のデザインだが、「アエラ」などのニュース解説イラストや「長野オリンピック公式ガイドブック」での競技の解説図などのダイアグラムも知られている。
木村氏が代表を務めるチューブグラフィックスのサイトには、氏の作品が多数掲載されている。
大井町駅前のホテル「アワーズイン阪急」ツイン館のレセプションフロアの壁を飾った千葉県木更津上空からの視点で描いた鳥瞰図(幅9メートル×高さは床から天井)
http://www.tubegraphics.co.jp/travelguide.html
朝日新聞社 AERA「歯周病のメカニズム」
SND*The Society for News Design*新聞デザイン協会Malofiej賞の金賞受賞作品http://www.tubegraphics.co.jp/medical.html
最近では、デザインワークのほかに、千葉大学や明治大学などの講師、社会人向けのセミナーやワークショップなどを精力的にこなし、インフォグラフィックスの考え方と手法を伝えている。
また、小学校の道徳の授業で、絵を描くことで児童一人ひとりの考えを「見える化」するなど、学校教育での活用にも取り組んでいる。
2010年発行の『インフォグラフィックス―情報をデザインする視点と表現』(誠文堂新光社)には、木村氏の作品とその手法、コンセプトのほか、木村氏が影響を受けたデザイナーも紹介されている。
9月13日の研究会ではこのお二人に、インフォグラフィックスの歴史から最新動向、ビジネス活用まで縦横に語っていただきたい。
(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)
JAGAT 印刷総合研究会のご案内
「デザインで情報を可視化する〜インフォグラフィックスの動向」
講師:永原康史氏/木村博之氏
2017年09月13日(水) 14:00-16:50