新事業開発を担う人材育成の仕組みづくり

掲載日:2017年9月8日

新商品や新サービスの開発には、知識やノウハウを備えた人材育成の仕組みをどう整えるかが課題になっている。

ビジネスの種を蒔き、育てるために

多様化する顧客のニーズを捉え、新商品や新サービスの開発へつなげようとする様々な試みが、印刷会社で提起されているが、一朝一夕ではなかなか実現にまで至らない。
ノウハウを熟知した人材の不足であったり、顧客のニーズと事業特性のマッチングが不十分であったりと多くの課題ゆえに、思うように進まないのが実情だろう。
新しいビジネスを創造するためには、マーケティング知識や開発手法を蓄えつつ、一方でそれを実践で活かしながら経験を積むことが求められる。
踏み出して種を蒔かなければ、実りの時は訪れない。
すぐには数字的な結果があらわれなくても、小さな成功を重ねていくことが、将来に向けた事業開発の礎になるはずである。
会社の成長を目指し、試行錯誤を重ねながら、実際に挑んだ印刷会社の取り組み事例をお伝えしたい。

■顧客視点を意識した提案が採用
従業員200名の印刷会社A社では、営業・DTP制作を中心に生産現場も交え、12名のプロジェクトチームを発足し、ターゲット企業の情報収集から検証・提案までのプロセスを共有する仕組みをつくった。ある顧客企業には、きめ細かなヒアリングを通して先方の困りごとの要因を抽出し、データベースを使ったアプリで業務改善を行う提案が採用されるなど、一定の成果を見た。長年取引のある会社であったが、請負型の営業から顧客視点を意識した提案をしたことによって、顧客の見方も「印刷をお願いする会社」から「相談できるパートナー」に近づいたという実感をもったという。その後も定期的に提案予定のプレゼンや進捗状況の報告会を社内で実施し、チーム外の社員への情報共有にも努めている。

■社内の活性化をもたらした新規事業開発チーム
創業60年を超える老舗企業であるB社は、従業員数100名の印刷会社だが、印刷の受注生産以外に収益の柱となる事業の立ち上げを想定して、社内に「新規事業開発チーム」を創設した。社長自らがチームのメンバーを指名し、リーダーとなってプロジェクトを推進。取引先の9割以上が地元顧客でもあり、同時に地域活性へつなげたいという思いもあった。最初に企画した地元の高校とのコラボレーション商品が好評で、顧客からの相談が増え、注目度が高まった。外部からの反響だけでなく、商品企画を進める過程で、様々な試みを経て各メンバーの知識や意欲が高まり、モチベーションの向上にもつながった。トライアルへの一歩を踏み出したことが、顧客との関係強化に加えて、人材育成の効果ももたらした。

これらの印刷会社は、いずれも新事業を開発するにあたって、社内プロジェクトを創設し、情報収集から計画、提案までのプロセスを社員が共有しながら進める形をとった。
開発にいたるノウハウを社内に蓄積しながら実践の機会を提供することで、事業開発を担う人材を育む仕組みづくりにもつながっている。
大きな収益を上げるまでには時間を要するかもしれないが、社内の活性化や挑戦する意欲
の形成という側面からみた成果が生まれたのではないだろうか。

■関連情報

■page2019に協友印刷(株)常務取締役菊地貴之氏がゲストスピーカーとして登壇
【S2】スモールスタートから成功へ導く新サービス開発手法と実行プロセス ~印刷会社の実践事例から学ぶ~
2019年2月6日(水) 13:00~15:00

印刷ビジネス開発実践講座2018
日 時:2018年10月~2019年2月(全7回)

   (CS部 原 淳子)