最近軟包装グラビア印刷がらみの話が多く、フィルム印刷なので白座布団やオペークインキ(ポスターカラーのように下色を隠してしまうインキ)のことやGCR のことまで考えてしまう。
GCR(Gray Component Replacement)とUCR(Under Color Removal= 下色除去)は親戚みたいなものだ。UCR は主として印刷適正改善のために、シャドー部のCMY が重なっているグレー成分を墨インキ(K)に置き換えることで総インキ量を抑えて、印刷適正を改善する。
例えばYM ベタで、C が40%、K5% の場合、30% グレー成分をK に置き換えた場合は、CMYK245% だったものがYMCK185% に節約できる。実際にはグレーバランスがあるので単純計算ではない(30% だったらYM が-26%、C が-30%、墨Kが+29.5% ぐらいか)。対してGCR はエフェクトポイントがハイライト部から影響してくるので、印刷適正の改善だけではなく、製版特性改善というか、色相がブレにくくなる。
GCR は、薄紙でも問題なく印刷できるようにドイツでUnbuntaufbau(無彩色印刷)という製版方法が提案され脚光を浴びたのだ。必要色+(反対色の代わりに)墨インキで調子を出すというもので、反対色(例えば赤ならYM が必要色でC が反対色だが、C の増減によって色相はずれまくる。K にすれば濃度の増減はあるが、色相変化はない)による色ズレが少ないという利点がある。
本来の必要色+墨と考えれば、100%GCR がUnbuntaufbau である。中途半端だと30°モアレ同士のロゼッタパターンが目立ってしまう。少し前、GCR でコストの高いCMY インキを安い墨インキに置き換えてインキコストを落とすというソフトが流行っていたが、Photoshop にも似たような機能は付いている。CUSTOM を選択して、日本のインキでは東洋インキとDIC がある。墨版生成硬調を選択すればGCR75%くらいだろうか、最大にすれば100%GCR が可能である。
さて、オペークインキだが、本来印刷(原色版印刷や錦絵)は色の数だけインキがあって、階調もインキの種類で表現するということなのだが、CMY のプロセスインキの発明によって三種類のインキ量バランスですべての色を表現できるようになった。
これは画期的な発明なのだが、インキの濃度によって発色が異なってくるので注意が必要だ。例えば軟包装材のグラビアインキを考えてみよう。インキが透けて見えるようだとスケスケでせっかく印刷する意味がなくなってしまう。しかし透けて見えないとプロセス4 色の場合に後から刷ったものが上に載ってしまい、下の色を隠してしまう(裏刷りの場合は逆)。基本的にプロセスインキは透けて下色が見えないと理論通りの混色はしないのだ。最後に白座布団を紙代わりに敷いてオフセットっぽく混色するのが常道だ。
これがFM スクリーンだとディザ拡散方式という重なりにくい網点なので、透けにくいインキでも50% 近くまでは何とかなるのだが、それを超えるとFM スクリーンでもしんどい。特に通常の網点の場合は33% 付近から他の色網と重なり出すので注意が必要だ。
GCR のサンプル画像としてSL や黒いカメラを使うのだが、大体が「首をひねってしまう」品質ばかりで、逆にカラフルな画像だと「これは素晴らしい!」ということになる。特にCMY 三色(ネガ画像っぽく見える)とCMYK 四色(彩度が上がったように見える)を見せると、あまりの差に皆さんビックリするだろう。
図 は左が通常のCMYK だが、右はGCR100% である。完璧なデータならレベルの高いGCR 製版は可能だが、印刷がふらついてドットゲインが大きくなった場合、特に墨のドットゲインが大きくなった場合は、墨は下地の色成分を通さないので、彩度が著しく低下する(日本の墨インキは濃い)。通常プロセス製版の場合の反対色は下色成分を透過するので影響はそれほどでもない。
(JAGAT 専務理事 郡司 秀明)