デジタル・ネット時代に紙の印刷物の強みをどうとらえ、ビジネスにするか。2年前のJUMPで「印刷の未来を創る」をテーマに各地でディスカッションを行い、五感に訴える印刷物とデジタルの連携がポイントになるとしたが、今年のJUMPでは具体的なマーケティングにおける紙の出番を考察している。
今年度のJAGAT地域大会(JUMP)は、創立50周年記念イベントとして日頃の感謝の意を込め、例年より豊富なプログラムを用意している。テーマとして“印刷ビジネスの可能性を追求する!~アナログとデジタルの融合による印刷会社の戦略を考える”を掲げたのは、今こそ紙(アナログ)の強みを発揮させ、デジタルとの融合により、相乗効果を出すシナリオを、印刷会社側から提案していきたい。そうした戦略を考える機会にしたいとの思いからである。
デジタルマーケティング全盛の時代となり、紙メディア(印刷物)は厳しい状況におかれている。2016年の広告費の内訳をみても(電通調べ)「新聞」「雑誌」といった紙媒体は前年を下回り「インターネット」は大きく伸びて初めて1兆円を超えたという。
しかし、デジタルメディアだけでマーケティングやプロモーションが完結できるものではない。自身を振り返ってみてもメールとDMではどちらを開封し、中身を見るかは考えるまでもないだろう。
ただし、紙だけで効果を出せるものでもない。例えばそもそも新聞を取っていなければ折り込みチラシではリーチできない。成果を出すためにはデジタルとアナログの組み合わせによる相乗効果を生み出すシナリオが必須である。
JUMP東北(9/8)、JUMP中国・四国(9/15)においてご登壇いただいた、フュージョン(株)代表取締役会長の花井秀勝氏の特別講演では、DMA(米国ダイレクトマーケティング協会)の調査結果で、すでにマーケターの半数以上はキャンペーンに3つ以上のチャンネルを使っており、まさにペーパーメディアとデジタルメディアの融合が進んでいることが紹介された。また、DMの通数は減っているが郵券代は大きく伸長しており、バラマキDMからよりパーソナライズされた1通単価が高いDMが増えていることが見えると解説。そして、紙(DM)が持つコミュニケーション力を「五感に訴える」「ストーリー説得力」「パーソナライズ最適性」とし、強力な「行動喚起メディア」であると説いた。
その実例として“原寸大”のおせち料理写真や、自動車の運転席の写真を使って売り上げを伸ばしたDMなどを紹介した。
数年前にネット販売された“おせち”が、届いてみると貧弱な中身で問題になったことがあったが、実物大のおせち料理の写真を、モニターではなく印刷で見せることにより、信頼感と説得力を得ることが可能になる。
また、自動車の運転席を実物と同様に見せることにより、家族みんながこの車に乗ってみたい、欲しいという実際の願望につなげる迫力があるということであろう。
花井氏は、世の中が変わり、得意先が変わる。それに対応して社内体制を変え、社内制度を変え、社員の意識を変革する必要がある。そのためには教育が原点であると力説するとともに、さまざまな可能性を秘めた業界に対し「本当に印刷関連業は面白い」の言葉で結び、参加者のモチベーションアップにつなげた。
JAGAT地域大会は、このあと九州(10/21福岡)、近畿(11/29大阪)、中部(2018/1/25名古屋)と各地を巡って開催する。
(CS部 橋本 和弥)
<関連情報>
◆JUMP九州2017&ジョイントセミナー 10月21日(土) 於:福岡印刷会館
◆JAGAT近畿大会 11月29日(水) 於:太閤園