見える化実践研究会をはじめるにあたり

掲載日:2017年10月16日

見える化サポートの現場から思うこと

「見える化」の効用は認めつつも、自社の課題解決に本当に役に立つのか懐疑的な見方をされる方は少なくない。
もちろん「見える化」は万能薬ではないし、守りの戦略であって直接売上増をもたらすものではない。
ただ、会社が変わるための起点にはなると思っている。

印刷会社から依頼されて「見える化」のサポートをするときには、まずは会社の現状について、いろいろな部署の方にヒアリングをする。
すると「見える化」をはじめる前に、その会社の抱えている問題、ひずみのようなものが見えてくることが多い。

ある会社では営業のリーダーが総論としては賛成していただけたが、どうも前向きではない印象があった。
部下の方にヒアリングしても朝は機嫌が悪くて話しかけづらいという声があったり、現場からは仕事の流し方が乱暴で不親切という声があった。

不審に思っていたが、勤務記録を見せてもらって納得した。
退勤時間は23時があたりまえ、ときには日付が変わっていることもある。
これでは、朝機嫌が悪いのも当然だし、仕事量が多すぎて、ひとつひとつ丁寧には扱ってはいられない。

事情をきくと、退職した部下の仕事を引き取っているという。新人が仕事を覚えるまでの間ということだったが、新人教育まで手が回らず、独り立ちする前にその新人も辞めてしまい、そのまま常態化しているという。
この状況では、問題意識はあってもとても「見える化」に取り組むどころではないことは理解できる。
かといって放置していいわけではない。

個人的には「見える化」とはマネジメントすることだと思っている。
印刷会社はまだまだ属人的な仕事のやり方が多く、人に仕事がついており、それがいろいろなひずみを生んでいる。
組織としてマネジメントすべき問題が個人の問題となってしまっている。

それを解決するのが「見える化」とまでは言わないが、課題解決に向けた糸口として非常に有効だと思っている。なぜなら、PDCAサイクルによる改善結果が収益性の向上(儲かる!)という形で結果に表れるからだ。その成功体験をさまざまな場面に応用して企業文化として定着させていくのが真のゴールだと思っている。

ちなみに前述の営業リーダーの件では、組織的な課題として認識され、「見える化」の取り組みと並行して優先的に取り組まれることとなった。

「見える化」というと理論や手法が注目されるが、2018年2月スタートの見える化実践研究会では、「実践」にこだわっていきたい。
コスト管理にとどまらない「活きたマネジメント」が学べる機会となるよう準備を進めている。世話役をお願いしている先進企業の視察や社長自らの講義で得られるものを、より深めて自らの血肉にするためのワークショップやツール研修、ディスカッションを行っていく。
意思決定の仕方、課題の優先順位のつけ方、社員育成の仕方など経営面でも得るものは多いはずだ。
「見える化」のベースとなる共通セオリーはあるが、その運用は各社で異なるものとなろう。参加者とともに考えていきたい。

研究調査部 花房 賢

 

見える化実践研究会では、短期間での「見える化」を実現するために、
”やり切る”サポートと取り組む企業の相互交流と自己研鑚の場をつくります。

https://www.jagat.or.jp/archives/39092