2017年10月26日開催「JAGAT大会2017」でお披露目となる『印刷白書2017』について、会長塚田司郎よりご挨拶させていただきます。
当期の経済情勢を見ますと、世界経済は一部に弱さは見られるものの全体としては緩やかな回復が続きました。日本経済も海外経済の改善を受け緩やかな回復が続きました。日経ダウ平均株価は2016 年6 月、イギリスのEU 離脱決定時には一時1 万5000 円を割り、トランプ大統領就任後、その政策期待から2 万円台まで戻しながらも不安定な動きをしています。また、この夏以降の北朝鮮に関する問題は予測が極めて難しい状況です。
今年は、地震や豪雨などの自然現象のほかにもトランプ大統領の発言によるアメリカでの騒動や、北朝鮮がいつまたミサイルを発射するのか、J アラートはいつ鳴るのかと落ち着かない日々が続いています。アップル社は2007 年にiPhone を発売してから今年で10周年を迎え、iPhone8 と顔認証で話題のiPhoneX を発売しました。モバイルでのコミュニケーションはますます進化し、Twitter やFacebook、Instagram での口コミが商品の売れ行きに大きな影響を与えることもあり、最近ではSNS で評判になるパッケージデザインの商品も出てきました。一方で音楽や動画、雑誌などのコンテンツの定額配信もすっかり定着しました。
このような社会の変化により、需要の変動が増大していくに従って、印刷物はより短時間で製造することが要求され、実稼動率も見直さなければなりません。残業時間削減のためには人の関わるタッチポイントを可能な限り減らす必要があります。これまでもCTPで出力した版をAPC(オートプレートチェンジャー)で版替えし、CIP3 のデータを受けてATD(オートトラッキングデンシティメーター)で色調確認することで刷り出しまでの時間が短縮されてきましたが、現在ではさらにLED-UV ランプや高感度UV ランプによりインキの乾燥時間がなくなり、後加工にすぐ入れるのでより短時間での製造が可能となりました。
デジタル印刷では、Web to Print の技術と受発注システムを提供するケースも多くなりました。プリプレス工程では、ハードコピーを人が持ち歩くのではなくリモートプルーフシステムで定期物などが進行されるようになりました。このほかにもネットを通じてデザインをアウトソースしたり、印刷物以外にWeb も含めたマーケティングサービスも提供したりしなければなりません。
現代では仕事のやり方を変えないと、トータルな業務効率が悪くなり、経営が成り立ちません。解決すべき課題の多い印刷企業および関連企業の皆様に、今年もこの印刷白書が役立つことを願っています。
2017年10月
公益社団法人日本印刷技術協会
会長 塚田司郎
書籍発刊のお知らせ
『印刷白書2017』2017年10月26日発刊