内定辞退、早期退職。採用が難しい時代には、企業の等身大の姿を見せる必要がある。Webページやパンフレット等の媒体での情報発信や、採用説明会、インターンシップで自社を体感してもらうことが重要である。
■人事を悩ます内定辞退、早期退職
2017年の新卒採用状況は依然とした売り手市場が続いている。マイナビの「企業新卒内定状況調査」によると、9割の企業が採用活動を「厳しかった」と回答しており、採用活動は困難を極める。また、内定及び採用後の問題として内定辞退、早期退職があげられ、拍車をかけて人事担当者の頭を悩ませている。
就活生は企業を選択するポイントとして、「安定性」「高い給料」が上位を占め、結果として大企業志向は高い。ただ、大手企業の安全神話も揺るぎ始め、企業の規模を問わず「働きがい」「やりたい仕事ができる」「社風が合う」等、仕事の価値観に焦点を当てる就活生も多い。大手企業の採用優位に変わりはないが、価値観の土俵であれば、中小企業にも優秀な就活生を獲得できるチャンスは十分にある。
■1Dayインターンシップの導入
中小企業の採用活動は、多くの学生に自社を認知してもらうことがスタートだ。就職サイトへの掲載、採用Webページの開設等、Webから自社の採用説明会に多く集める必要がある。これらは一般的な採用活動であり不可欠であるが、+αの学生への訴求活動として多くの企業が取り入れているのが「インターンシップ」である。インターンシップとは、学生が一定期間企業の職場体験ができる制度で、その期間は1日から長いもので1ヵ月程度と多岐に渡る。「就職白書2017」によると、2016年度にインターンシップを実施した企業は64.9%と、2015年度の55.5%より9.4ポイント増加している。また、中小企業の実施率も2017年度が46.2%と、2015年度の36.3%と比較して9.9ポイント増加し、企業規模を問わずその重要性が高まっている。
インターンシップを実施する企業のメリットは、ホームページや会社案内パンフレットだけでは伝えられない、仕事内容や会社の風土、社長はじめ社員の人柄等、自社の魅力を学生へ理解を促すことができる。また、結果として採用活動前に学生へアプローチができるため青田買いの効果もある。
一方、中小企業がインターンシップを実施する上で課題となるのが、人や時間に余裕がないことである。限られた人員で事業を営んでいるため、営業であれば売り上げに、製造であれば生産性に直接影響する。そうした原因もあり、中小企業のインターンシップ導入は遅れていた。そこで近年、中小企業に注目されているのが、「1DAYインターンシップ」である。
社員の拘束時間が少ないため中小企業でも導入が容易である。学生も、気軽に参加しやすい等双方に負担が少ないためそのメリットは大きい。印刷会社の1DAYインターンシップの実施例をあげると、アプリケーションを利用したデザイン体験、印刷工場ツアー、仮想顧客への企画提案ワークショップ、営業同行等、多岐に渡るプログラムを用意している。参加した学生からは、「印刷業界は“印刷”をする会社だと思っていたけど、企画やデザイン、プロモーション支援、デジタル展開等、仕事の幅が広いことを知った」の声を得た印刷会社もあるという。
中小企業は知名度で就活生を集めることはできないが、仕事内容やその社会的意義が高い企業も多く、そのリアルな姿(良い面も悪い面も)を伝えることができれば、共感する優秀な就活生は必ずいる。地道な努力が必要ではあるが、中小企業の新卒採用もまだまだ、チャンスがある。
CS部 塚本 直樹
■JAGAT内定者向け通信教育「新入社員コース」
https://www.jagat.or.jp/new_employee