5大全国紙の合計部数より多い2500万DLのニュースアプリ「Smart News」はAIを駆使して記者なし・編集部なしのビジネスモデルで急成長する。掲載ニュース選別、記事割付、組版・禁則処理まですべて人間がまったく関わらずAIが担うことで大量の記事収集と配信を可能にした。
有料の新聞とニュースアプリの単純比較はできないが、ウェブニュースが大きな影響力を持ち始めたことに疑いの余地はない。ウェブは今までなら間違いがあっても許されたし、ユーザーも信頼性の期待はしていなかった。しかしウェブの影響力が高まるに従い、まとめサイトやフェイクニュースが社会問題化するなど世間のニュースアグリケーションサイト(収集と整理・配信をするサイト)に向ける目は厳しくなっている。
一方、従来の新聞各社は部数減少に紙面・機構の改革、デジタル対応での打開を試みているが方向性を見出しきれない。こうした状況はたとえば折込チラシの減少を通じて販売店や広告会社、印刷会社など広範な業界に影響を及ぼす。テスト運用にとどまってきたデジタル印刷は、日刊プロスポーツ新聞社における実稼動によっていよいよ実用化の段階を迎え、これも各方面に影響を及ぼしていくだろう。
ニュースアプリが新聞社に記事使用料を払う動き、(取材して)一次コンテンツを制作した新聞社に読者を誘導する意図を持った、対立から協調の動きも見られる。このように現在は従来型の新聞社とニュースアプリが入り混じり、AIのような先端技術の実用化によってニュースビジネスの生態系そのものが大きく変わり始めた状況にある。大手新聞社の電子版にもAI作成の記事が散見され始めた。
ニュースビジネスはどのように変わっていくだろう。「Smart News」のようにAIやアルゴリズムにコンテンツをすべて委ねる手法は、データ生成がボトルネックになっているデジタル印刷ビジネスのヒントにもなる。彼らはどのような考え方で膨大なデータをハンドリングしているのか。松浦氏はAIをデジタル時代の輪転機のようなもの、ニュースアプリをニュースのコンビニエンスストアのようなものだという。
10月30日の研究会「新聞・ニュースビジネスの最新動向2017」では、前半は井上氏が新聞業界の国内外最新動向とスポーツ新聞社のデジタル印刷導入事例を解説、後半は日米通算2500万DLを持つスマートニュース社の松浦氏がスマホとAI/ITによるビジネスモデルを解説、合わせて新聞・ニュースビジネスの方向性を考察する。
(研究調査部 藤井建人)
関連セミナー
新聞・ニュースビジネス最新動向2017
2017年10月30日(月) 14:00-16:40
新聞のビジネスモデルが大きく変わろうとしている。新聞各社は構造的な部数減に機構・紙面改革で対応、デジタル印刷を実採用する事例も現れた。フェイクニュースやまとめサイト問題で揺れたネットニュースメディアはAIなどにより新しい次元に挑戦している。