知識を錆びつかせないためには、1度覚えたスキルや技術であっても、定期的なメンテナンスが必要だ
JAGATでは、毎年秋に「印刷技術の基礎知識」のためのフォローアップ研修を実施している。印刷物製作の各工程でデジタル化が進む一方、作業間の連携をスムーズに行うためには、ベースとなる知識を揃える必要がある。新人に対する知識強化だけでなく、経験者にとっても、過去に覚えた知識を錆びつかせないために、定期的に再確認の機会を設けて、補強してもらうことが目的だ。
■曖昧な知識を使える道具にする。
印刷会社に入社してくる未経験者は、新卒であれ中途入社であれ、まずは「印刷の仕事をする上で必要な基礎知識」を習得することが必須である。その多くは入社直後に社内研修あるいは外部の研修機関で一通り学ぶ。またはOJT形式で先輩社員から、業務に必要な知識を仕事の合間を見ながら教えてもらうこともあるだろう。
印刷の業務知識は広範囲にわたり、かなりのボリュームにわたる。入社間もない時期に、短期間で吸収した知識は、何となく覚えたつもりで、整理されないまま、実は未消化のままになっていることもあるのではないだろうか。実践で使ってこそ活用できる知識も、仕事で使う機会が少なければ、そのまま埋もれてしまいがちになる。中途半端に備わった知識が、ある時思わぬトラブルの原因になることもある。経験を重ねる過程で、分かったつもりになっている知識を、折を見て棚卸しを行い、必要であれば最新の情報に更新することが大切になってくる。
■業種をこえて求められる基礎知識の強化
「印刷技術の基礎知識」の習得を目的として、フォローアップ研修に参加しているのは、印刷会社の社員に限らない。参加者の属性をアンケート結果から見てみると、参加企業32社のうち、印刷会社は約半数の17社にとどまり、残り5割は印刷関連メーカーやその他のデザイン・広告・出版関係からの参加である。「印刷技術」の知識習得とブラッシュアップを必要としているのは、印刷会社だけでなく、印刷関連業界にも広がっている。また、業種に関係なく経験年数だけを見ると、新卒や中途入社後1年以内といった新人が5割を占め、残りの半数は経験者が占めている。
日々刷新される印刷技術に対して、新入社員だけでなく、経験を重ねた社員であっても、つねに見直しを行い、知識の強化に努めようとする意識がうかがえる。
■体系的に知識を備える
メディアが多様化する中で、「印刷」の価値を最大限に訴求するためには、高い印刷品質を実現するためのトータルな知識を持つことが必要になる。そのためには、他の要素とのつながりを理解しながら体系的に習得していく方が効率的であり、実務に必要な部分をサミダレ式に覚えていくやり方では、新しい業務が加わるたびに、関連知識を学び直すことになる。
またベースとなる知識は、職種を問わず、印刷の仕事に関わる全員が押さえておきたい。上記のアンケート結果では、印刷会社を対象とした職種別の内訳を見ると、営業が6割、印刷・製造部門が3割を占める他、製版や制作部門まで、職種に関わらず参加している。
印刷物製作に関連した知識を体系的に学習する機会として、JAGATでは必須知識を網羅した「印刷物製作入門講座」を毎年4月に開催している。座学だけでなく、DTP制作やオフセット印刷実習などの体験学習も選ぶことができる。新入社員研修の一環として実施しているが、経験者や他業種からの参加者も交え、印刷技術知識の入門として幅広く利用されている。知識のスキルアップを目指すなら、最初に基礎を体系的に習得し、節目ごとのフォローアップの実践をおすすめしたい。
■関連情報■
JAGAT 2018年度新入社員研修