印刷業界以外を経験されて、家業の印刷業界に戻った経営者(息子)やその能力が評価されて印刷業界にやって来た方々を集めて、印刷業界が変えないとマズイ点、弱み、こうすればビジネス的な強みになるのではないか?と言った事をpage2018の基調講演3では徹底的に討論したい。
page2018の最終日である2月9日の基調講演3「他業界から見た印刷業界」では、他業界で経験を積んだ三人の経営者に御登壇いただき、初めて印刷業界に来た時に「おかしいと感じた点」「このやり方は普通では考えられない」と思ったことを忌憚なく語っていただき、皆さんで議論していきたい。
例えば株式会社ディグの杉井社長は東京電力から印刷業界に来たのだが、電力消費に関してはプロ中のプロだったわけだ。印刷会社の印刷機は電力で動くし、使用されるほとんどの機器も電力で動くので、省電力しただけで、印刷会社は大きな経費削減になる。
社長に成り立ての頃は省電力で成果を上げ、次々に手を打っていたのだが、最初はやはり物作り中心の考え方だった。それがだんだん変化し始め、最近の杉井社長の主張は「モノ売り」から「コト売り」へ完全にシフトしている。
例えばデータを単なるデータからコンテンツに変えられれば、これは立派にビジネスになるわけで、印刷と同等の加工を加えたことになるのでは?という発想である。経費を安くして儲ける(経費を安くすれば価格も安くなり、売上げも上がる?)ことから、お客様との関係をどのように上手く築いていくかにシフトしているのだ。
この具体的なビジネスアイディアについてはpage2018でのお楽しみなのだが、社員教育や人材確保についてもインターンシップの活用等、アグレッシブに動いている。株式会社ディグは創業97年の老舗印刷会社なのだが、その老舗印刷会社をここまで変えることは並大抵のご苦労では無かったと思う。
仙台の老舗印刷会社である今野印刷の五代目である橋浦社長の前職は第一生命経済研究所のアナリストである。普通に考えればエリート、安定、等々、いくつも褒め言葉が続く。またアナリストの仕事が大好きだったということだ。
そして、アメリカへの内示が出た頃に義父である前社長の今野氏から五代目の話が出たそうである。色々考えたそうだが、英断して現在があるということである。話があった時から、経営は大変だろうとの想いは強かったらしいのだが、そこにあえて飛び込んだというのだ。
その橋浦社長も話を聞いていると、お客様との関係を構築するのが最適だとしている。「印刷コンシェルジュ」や「印刷プランナー」というような価値を提供したいとしている。ただ単なるマスターベーションではない、インターネットともリンクした印刷物の価値には、元経済アナリストであるので、冷静に評価している。
いくら素晴らしい紙コンテンツを提供したって、商業印刷ならばマーケティング的に必要とされるモノでないと、全く意味がないのである。この辺についての考察も是非お聞きしたい。
今野印刷くらいの大きさの印刷会社だと少々軽んじてしまうような、年賀状やカード類も今野印刷では大きな強みにしている。橋浦氏が社長になってから「創業100周年のベンチャー企業を標榜」されてきたのだ。これもシンクタンクで養われたと言えるだろう。また近未来のビジネス拡大の一環として、地方創生のコンサルティング会社(株式会社プロジェクト地域活性)を買収し、地域活性ビジネスを活性化させようとしている。この辺の話も大いに伺いたいところだ。
加藤製本の加藤隆之社長は、製本屋の息子として生を受けたのだが、頭が良かったので、早大に行き、そして興味があった産経新聞記者になったのだ。それも社会部記者として金丸信・元副総理やオウム真理教を取材していたのだから、記者としての花道をまっしぐらに進んできたと言える。
その加藤氏が家業に戻って製本屋を継ごうとしたのだから、様々な不合理は目に付いたと思うのだが、記者独自のリアリズムで冷静に捉えてきたのだと思う。製本の現実、しかし、今のままでは決して良くないこと、等多くのことが見えていたと思う。加藤社長になって様々なことをトライしようとしている。本業の製本の合理化はもちろんなのだが、製本+のビジネスも模索している。
そんな苦労をしてきた登壇者の三人だけに、きっと普通では聞けない点を指摘してくださると思う。またその指摘は現在の印刷業界は重く受け止めなくてはいけない点になると確信している。
(JAGAT専務理事 郡司秀明)
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