中小企業の採用における「内定者教育」の重要性

掲載日:2014年11月18日

2015年3月卒業予定の求人・求職状況は、前年を大幅に上回り大卒だけでなく、高卒についても1倍台を超えているという。特に中小企業にとっては採用難となりつつある。

■中小企業における採用活動の課題
(1)多くの学生は大手企業への関心が高く、まず大手企業にアプローチしてから、徐々に中小企業へ関心を移していくので、中小企業の学生に対する広報期間は短く、十分なアピールが難しい。閣議決定により2015年度卒業・修了予定者から採用選考活動の開始時期が前年の8月1日以降となったことで、実質的な期間は今後さらに短くなる。

(2)学生にとっても業界、企業研究の時間を十分に取れずに、内々定承諾後にブレが生じ、入社直前での辞退、あるいは入社後早期に退職する確率が高まる可能性が懸念される。

特に中小企業の新卒採用活動は大企業とは違い、内定辞退、早期退職を考慮して余剰に採用することは困難なため、上記のデメリット(2)が生じることは大きな経営リスクを負うと言っても過言ではない。限られた採用枠のなかで、「内定辞退防止」、「入社後の早期退職防止」について、より一層対策を講じる必要があり、内定者フォローが重要になってきている。

■内定者が不安に感じていること
1. 学生から社会人への環境変化による不安
2. 内定先企業および業務内容の理解不足による将来性への不安
3. 同期、先輩社員との人間関係の不安

大別すると上記のような不安を抱えている内定者が多い。企業はこれらの不安要素を解消することで、「内定辞退の防止」および「入社後の早期退職防止」リスクを軽減することが必要になる。

そこで多くの企業は、「内定者同士の懇親会」「先輩社員懇親会」「社長懇親会」等のコミュニケーション機会を作り、人間関係の不安解消に努めることで内定辞退に抑止をかけている。また、内定者側も各種懇親会を希望しているので、有効なフォロー対策であることは間違いない。ただし、懇親会が担う役割としては、主に人間関係の不安を解消するものであり、学生が不安に感じている要素として挙げた、「学生から社会人への環境変化による不安」「内定先企業および業務内容の理解不足による将来性への不安」を解消するには少し弱い。そこで懇親会+αの内定者フォロー対策として注目されているのが、「内定者への教育機会提供」である。

■内定者教育の必要性
マイナビの「2015年卒毎ナビ学生就職モニター調査結果」によると、「内定者懇親会」を「受けた」と回答した学生の比率が8割近くなっている一方で、「実際に受けた」と「今後受けたい」のギャップが大きい項目として、「勉強会・グループワーク・研修」(企業から受けた割合18.4% 今後受けたい割合38.6%)、「通信教育(郵送形式)」(企業から受けた割合5.4% 今後受けたい割合13.8%)「通信教育・e-learning」(企業から受けた割合1.8% 今後受けたい割合18.1%)がある。
このように内定者の需要(ニーズ)と企業の供給(フォロー)が合致していないのが現状だ。つまり、内定者教育をフォロー活動の一環で実施することで、内定者のニーズを充足するとともに、他社には無いフォローを展開し、内定者に対して魅力を訴求することができる。また、「内定先企業および業務内容の理解不足による将来性への不安」を解消する一助にもなる。その他、企業として社員に教育機会を提供している面も訴求できるため、学生の口コミ等で広がり次年度以降に優秀な学生が集まる可能性もある。

■内定者教育の方法
内定者教育の方法はさまざまであるが、大別すると以下を実施している企業が多い。

【集合研修】
社内講師、外部講師による、企業理念の浸透、印刷業界の概況、仕事の流れ、マナー研修、グループワークによるチームワーク力UP等の研修を実施する。
(メリット)
内定者と直接コミュニケーションを図り、自社の理念と特徴と業務について浸透させることができる。
(デメリット)
・内定者が一堂に会するので、人数が多い場合は交通費等の費用がかかる。
・召集調整に手間がかかる。
【通信教育】
印刷業界の概要、一般的な仕事の流れ、印刷技術の基本の講座をテキストと講師添削により体系的に学習する。
(メリット)
・各地域にいる内定者に対して同質の教育を一括で受けさせることができる。
・3カ月から4カ月の期間をかけて学習するため、社会人としての意識付けができる。
(デメリット)
・内定者と直接コミュニケーションをとることができない。

それぞれメリット、デメリットはあるが、内定者教育を実施している企業は、両方をうまく組み合わせているところも多い。

そのほか、資格取得の推進、工場見学等がある。また、ある印刷会社の面白い取り組みでは、内定者同士でチームを組ませ、仮想クライアントの課題に対して、マーケティング、印刷物の企画・設計、印刷・加工そして、プレゼンテーションまでをさせているところもある。この教育の効果は、業務の流れ、印刷知識の習得だけではなく、これからの印刷業はマーケティング、企画、提案等のソリューションが必要であることを体感的に伝えていることである。若い世代から川上志向を浸透させていくのは非常に効果的である。また先輩社員、同期のチームで取り組むことにより、縦横の人間関係醸成にも一役買っているため、内定者の不安を一掃できる、素晴らしい施策である。

内定者フォロー施策の一環として内定者教育を取り入れていくのは、これからさらに重要になると考えられる。JAGATでは、通信教育、講師派遣研修等で内定者教育を提供している。内定者教育で多く利用されている通信教育について、受講者の声、人事担当者の声、講座の評価を掲載したページがあるので、興味がある方はご覧いただきたい。

(JAGAT CS部 塚本直樹)

内定者教育に最適な通信教育「新入社員コース」

〇参考
2015年度新入社員研修(セミナーメニュー)