2016年の印刷産業の事業所数(全事業所)は14.3%減、東京、大阪、埼玉、愛知で4割を占める。都道府県別産出事業所数は「オフセット印刷物(紙に対するもの)」が不動の1位となった。(数字で読み解く印刷産業2018その1)
印刷産業(全事業所)の事業所数は、昨年末に公表された最新の調査結果(総務省・経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査 製造業(産業編)」)によれば、2万2140事業所(2016年6月1日現在)で、前回調査の「平成26年工業統計表 産業編」(2014年12月31日現在)に比べて14.3%減となりました。
都道府県別に見ると、東京都が4256事業所(全国の19.2%)と最も多く、大阪府2420事業所(同10.9%)、埼玉県1543事業所(同7.0%)、愛知県1358事業所(同6.1%)と、都市圏が上位を占めています。増加率では47都道府県のすべてで減少し、最も減少幅が大きいのが東京の23.1%減、次いで大阪・佐賀の17.8%減、愛媛の17.3%減となりました。
次に人口に対する事業所数で見ると、東京に次いで、人口78万人の福井が事業所数241で2位となり、以下大阪、京都、長野、岐阜と続いています(下表参照)。福井県は眼鏡の産地として有名で、一番多い事業所は「眼鏡枠」ですが、次に多いのが「オフセット印刷物(紙に対するもの)」の事業所なのです。47位は人口623.6万人の千葉(事業所数472)、46位が914.5万人の神奈川(同743)、45位が山口、44位が鳥取、43位が長崎、42位が滋賀と、下位6県は前回と同じ顔ぶれとなっています。
1月19日に経済センサスの参考表として、「製造業(品目編)における都道府県別上位1~3位品目の産出事業所数及び出荷金額」が公表されましたが、1位「オフセット印刷物(紙に対するもの)」、2位「その他の製缶板金製品」、3位「その他の製造食料品」と例年どおりの順位となりました。
これを都道府県別にみると、「オフセット印刷物(紙に対するもの)」は東京1217事業所、大阪696事業所、愛知436事業所の3都府県合計で産出事業所数の3割強を占めています。この状況は、現在の品目分類となった2008年調査から変わらないものです。ちなみに2016年調査では26都府県で第1位品目、12道県で第2位品目、4県で第3位品目となっています。
印刷産業の事業所が存在しない県は一つもないことからも、印刷産業の裾野の広さがよくわかります。また、東京だけが1位から3位を「オフセット印刷物(紙に対するもの)」「写真製版」「紙以外のものに対する印刷物」と、印刷・同関連品が独占し、東京の地場産業が印刷産業であることが統計からも明らかになっています。
2008年より前のデータを見ると品目分類は違いますが、1位の「平版印刷物(オフセット印刷物)」が突出し、2位以下が半分程度という状況は、1996年ごろから続いています。ただし、1996年の時点では「凸版印刷物(活版印刷物)」が8位、「写真製版(写真植字業を含む)」が19位と、印刷・同関連品の産出事業所が上位30品目に3品目入っていることが大きな違いです。その後、凸版印刷物は徐々に順位を下げ、2007年の27位を最後にランク外となり、写真製版は2000年ごろまで20位前後を維持していましたが、2002年の29位以降はランク外となりました。平版印刷物の1位は1993年から現在まで続いていて、ここからも印刷需要の根強さがうかがえます。
JAGAT刊『印刷白書2017』では印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝えきれないことなどは「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。
(JAGAT 吉村マチ子)