やり抜く”見える化”~実現して会社はどう変わったか

掲載日:2018年3月23日

去る1月25日に実施したJAGAT中部大会のメインプログラムでは「やり抜く“見える化”~実現して会社はどう変わったか」をテーマとしたディスカッションを行った。

ディスカッションのスピーカーには“見える化”に取り組み、実際に成果を上げている富沢印刷(東京都荒川区)代表取締役社長の富澤隆久氏と、近藤印刷(愛知県名古屋市)代表取締役社長の近藤起久子氏を招いた。
また、コメンテーターとしてアサプリホールディングス(三重県桑名市)の松岡祐司氏にも参加いただき、JAGATが新たに立ち上げた「見える化実践研究会」の担当部長である花房賢がモデレータを務めた。

オリエンテーションで花房が、“見える化”によって得られる成果、実現を妨げる要因などのポイントを解説した。
次に富澤氏、近藤氏が、取り組み事例発表として自社がどのように見える化を推進したのか、結果としてどのような成果が得られたのかを発表した。
ここで詳細までは報告できないが、立ち上げの苦労、特に様々なつまづき要因に対しあきらめずにクリアしてきた手法を具体的に語っていただいた。
また、成果として、原価管理による利益アップにつながったことは当然として、全案件の工程別収支を一元確認ができ、赤字案件の対策ができること。
目標達成見える化シートにより、顧客別の対応も可能になったこと。
全員にオープン化された数字により、無駄な議論がなくなり中短期経営戦略に反映が可能となったこと。
などが報告された。

松岡氏からは「2社はとてもうまくいっている例だが、一番大事なのは全社で理念と目的をきちんと共有することだ。見える化を進めると、社員や部門の悪いところがあからさまになるので、それが出来ていないと失敗する。
そして経営者として見える化の優先順位を一番にしなければならない。利益を確保してこそ、社員の給与にも反映でき、また教育や投資も可能になる」とコメントがあった。

続くディスカッションは、1.見える化によって可能となった経営判断は?、2.全員経営は本当に可能か?、3.働き方改革と見える化、という3つのテーマに沿って進行した。
1.に対し富澤社長は「見える化は野球に例えれば守備(守り)であり、点を取るためには常に攻撃(攻め)が必要で、自社の強みである営業対応力を伸ばす戦略判断に至り社員にも共有できたと」語り、
2.の全員経営に関しては、近藤社長が単刀直入に「可能です。日々実感している」と応じた。お二方とも、社内のすべてが数字で確認、動くので価値基準、判断基準が同等となり、報奨金制度なども公平性が担保できる。
全員で考え、全員で参加し、実行する風土が形成されるということで、全員経営が可能という話である。
3.についても“見える化”で時間と利益が明確になるので、時間を大切にし効率化を考えることは働き方改革につながる。
利益管理がきちんとできているからこそ、安心して新たな働き方を模索したり挑戦もできるということであった。

“見える化”について最後に一言、と振られると、富沢氏は「自分たちは人まねでここまで来た、今回お話したのもこれまで大勢の方にお世話になったことに対し、少しでも恩返しが出来たらという気持である。是非皆さんにもまねをして欲しい」。
近藤氏は「この会場に“見える化”を迷っている方がいらっしゃるなら心からおすすめする。私たちにできたのだから皆さんにも必ずできます」と、それぞれおっしゃってディスカッションを終えた。

業界にあって、ともすればライバル会社ともなる立場にありながら、互いに情報をオープンにして見える化に切磋琢磨している様子に、会場の聴講者からも惜しみない拍手が送られた。

(CS部 橋本 和弥)

【関連情報】
JAGAT地域大会(JUMP)
見える化実践研究会
『JAGAT info』3月号