ものづくりニッポンの曲がり角

掲載日:2018年5月9日

有効求人倍率(2017年)は、44年ぶりの高さ(1.50倍、厚生労働省)になった。しかし、これらの数値いずれも平均であり、建設や介護・サービスなどは約5倍と高いが、事務やデザイナーなどは1倍を切るなど、職業別では大きな違いがある。
世の中全体としては、新人をはじめ人手不足が深刻だ。そのような環境の中、品質管理担当者の数も不足しているようだ。

現場任せの品質基準

厚生労働省が2018年3月に発表した同年1月の有効求人倍率を見ると、生産工程における製品検査の職業(金属除く)は2.80倍だ。この調査からも分かるように検査員が不足している。
先日、新幹線の台車に破断寸前の亀裂が見つかった問題では、驚くような原因が明らかになった。製造元企業が規定に反して、台車の枠を薄く削り込んでいたため、始めから台車の強度が足りなかったのである。
また世の中、官民そろってデータ改ざんなど不祥事が相次いでいる。各企業では管理体制強化のための取り組みを実施しているが、団塊世代引退のため企業内における需給バランスが崩れている。日本のものづくりにおける信用問題になりかねない案件だけに、今後の対応にも改善、注意が必要である。印刷会社も多くは受注産業を担っている。顧客の案件ごとに異なる製品を作り上げるという面では、品質管理は重要であり決して他人事ではない。

不祥事の内訳を見ると、官民ともに現場責任を前面に押し出している。近年相次いでいる自動車や鉄鋼メーカーの不正行為でも同様の説明が繰り返された。製造現場に安全を軽視する空気があるなら問題である。
余談だが昔、建設関係でアルバイトをしていた経験がある。超大手建設会社の孫請け程度の仕事であったが、現場で働いているうちの一部は教育も受けていない素人(学生アルバイト)ということを考えると恐ろしい。その後、工事現場の近くは歩かない方が良いと皆に話したほどだ。
現在そのようなことはないと思うが、国際競争の激化やさらなるコスト削減要請など、結果として末端である現場が大きな負担としわ寄せを受けている。

他国に追い越される?技術力

ものづくりニッポンとしては、他国との技術的な競争力も心配だ。たとえば、中国の製造業はかつて「コピー製品天国」という評価であったが、現在では設計・開発からブランディング、製造、販売までトータルで実践する企業も増えている。成長要因として研究開発費の増大があげられる。また分業構造による高い技術力やブランド力がある。さらに今後期待されるドローンや対人ロボットなどの分野で若手起業家が活躍しており侮れない。特許の国際出願件数も日本を抜き2位になり、間もなく米国を抜き1位になるとの予測だ。このように中国イノベーターが急増している。

最後に「従業員は、会社が自分を扱ったようにお客を扱う」という言葉もある。大切に扱われていない社員が、お客様が使用する製品を粗雑に作っている、ということはないだろうか。
「利益=顧客満足料」と考えた場合、お客様の満足度に比例して利益が上がるものだ。それによって社員の待遇改善につながる。
少子高齢化時代のなか人手不足は深刻だ。世の中は、ある程度豊かになり、仕事選びも賃金はもちろん、環境、やりがい等の条件を重視する傾向にある。各社がより良い人材を確保し続けるためにも、社員のヤル気を引き出す魅力ある環境づくりが、より重要になっている。

(西部支社長 大沢昭博)

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