企業が社員教育訓練を行った場合、セミナー受講料などの訓練経費と訓練期間中の受講者に支払う賃金の一部を助成してもらえる制度だ。
人材育成を積極的に行っている企業は「人材開発支援助成金」を利用している。平成29年3月までは「キャリア形成促進助成金」の名称で展開されており、こちらの名称に馴染みがある方が多いかもしれない。
本助成金は企業が社員教育訓練を行った場合、セミナー受講料などの訓練経費と訓練期間中の受講者に支払う賃金の一部を助成してもらえる制度だ。
本助成金のコースの一つである「特定訓練コース」は、労働生産性の向上に資する教育訓練などを社員に実施した場合に助成金が受給できるものである。助成額、助成率共に高く利用している企業も多い。
<特定訓練コースの助成額>
例えば、総訓練時間が10時間で受講料100,000円のセミナーを社員に受講させた場合は、最大で52,600円の助成金を受給できる可能性がある。
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(内 訳)
●賃金助成 :760円×10時間=7,600円
●訓練経費助成:100,000円×45%=45,000円
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申請書類の作成などの作業は発生するが、セミナー受講料の半分以上を受給できるのは、限られた資金のなかで経営している中小企業にとっては価値のある助成金だ。
■若手社員の育成に活用しやすい訓練コース
特定訓練コースの対象になる訓練は大きく7つの訓練が設定されていますが、印刷企業として取り組みやすい訓練として「若年人材育成訓練」がある。
1)若年人材育成訓練
対象者 :雇用契約締結後5年以内かつ35歳未満の雇用保険の被保険者
基本要件:OFF-JTによる訓練(訓練時間が10時間以上)
主に若手社員向けの人材育成訓練が該当する。一番イメージとしてわかりやすいのは、新入社員研修や、入社5年以内の社員に対するフォローアップ研修だ。印刷企業が良く導入している訓練内容としては、印刷技術やDTPなどの基本知識、営業・マーケティング手法、デザイン制作技法、印刷オペレーターへ教育などがある。ただし、若手社員向けのセミナーとして良くある、「マナー・接遇研修」「モラール向上」「資格試験対策」などのテーマは助成金受給の対象外になるので注意したい。
印刷業も人材不足、若手の採用難が続く厳しい時期のなか、若手社員は企業の長期的な未来を担う貴重な財産である。若手社員に教育の機会を与えることは、スキルアップはもちろん、社外の空気に触れさせることでマンネリの打破、モチベーションの向上などの効果もある。ただし、中小企業にとっては育成にかけられる資金には限りがあるので、こうした助成金制度をうまく活用していくことが重要になる。
(JAGAT 塚本直樹)