印刷会社の環境対応にはさまざまな施策、そしてさまざまな認証制度がある。
10月3日の印刷総合研究会「カーボンニュートラルに向けた印刷会社の環境対応」を企画するにあたり整理したことを紹介したい。決して網羅しているわけではないし、意図したわけではないが結果的に偏りが生じているかもしれないことはあらかじめご承知おきいただきたい。
まず、はじめにChatGPTに印刷業界のカーボンニュートラルに向けた取り組みを聞いてみた。
印刷業界がカーボンニュートラルに向けた取り組みを進めるためには、以下のようなアクションを考慮することが重要です。
- エネルギー効率の向上: 印刷プロセスや機器のエネルギー効率を向上させることで、二酸化炭素(CO2)排出量を削減できます。省エネルギーの印刷機やLED照明の導入、機器の定期的なメンテナンスと最適化などが含まれます。
- 再生可能エネルギーの利用: 印刷施設での電力供給に再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力など)を利用することで、カーボンニュートラルな運営を実現できます。自社の施設にソーラーパネルを設置するなどの対策が考えられます。
- 印刷物の効率化と廃棄物削減: 印刷物の設計や生産プロセスを見直し、使用する材料量を減らすことで廃棄物を削減します。また、リサイクル可能な材料の使用や、環境に優しいインクの採用も重要です。
- カーボンオフセットの活用: カーボンオフセットプログラムに参加し、排出したCO2量を相殺する取り組みを行います。
- サプライチェーンの管理: 印刷業界は多くのサプライヤーと関わるため、サプライチェーン全体での環境負荷を最小限に抑えることが重要です。サプライヤーの環境への取り組みや持続可能な認証を重視し、協力関係を築くことが求められます。
- 環境意識の向上と教育: 従業員や顧客に対して環境意識を高めるための教育と情報提供を行います。環境にやさしい印刷方法や選択肢を啓発し、持続可能な選択を促進します。
これらの取り組みは、印刷業界がカーボンニュートラルな未来に向けて歩みを進めるための一部です。ただし、具体的な取り組みは企業や組織によって異なる場合があります。
ChatGTPの回答は必ずしも正しい回答ばかりではないと聞くが、あまり見識がない分野について概略を手っ取り早くつかむという点では十分に便利なツールであると感じる。
つぎに環境関連の認証制度、認可団体を調べてみた。
認証制度ではないが、印刷関連10団体を束ねる日本印刷産業連合会(以降、日印産連)では、業界の指針として、印刷業界「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表している。
・GP(グリーンプリンティング)認定制度 (日印産連)
GP認定制度は次の三つの制度から成りつ。1)環境配慮された印刷工場を認定する「GP工場認定制度」、2)印刷工場が使用する資機材を認定する「GP資機材認定制度」、3)認定工場が製造した印刷製品にGPマーク(環境ラベル)を表示できる「GP製品認定制度」。
・再エネ100宣言 RE Action
事業活動に使う電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示し、再エネ100%利用を促進する新たな枠組み。印刷会社の取得実績あり
・SBT認定(SCIENCE BASED TARGETS)(リンク先は英語)
環境省による日本語解説
直訳すると、科学的根拠に基づいた目標設定。カーボンニュートラルの対策として自社の目標が世界的な基準と合ってることを認める制度で、減らした実績に対して認定されるのではなく、減らす約束に対する認定。「2018年のCO2排出量」と「いつまでに、どれだけ削減するか」という目標を申請する。
・グリーン購入ネットワーク
環境への負担がより少ない製品やサービスを購入する「グリーン購入」を促進するため、現在の環境省などが1996年に立ち上げたネットワーク組織
・日本WPA(日本水なし印刷協会)
「水なし印刷」を通じて、環境にやさしく、高品質な印刷物を提供することを目的として環境保全・事業発展・普及活動に取り組む組織。会員は「バタフライロゴ」を印刷物に表示することができる。PGG(Printing Goes Green)というCO2排出量算定ソフトウェアを提供し、カーボンオフセットの証明書を発行。
・日本サステナブル印刷協会
印刷物のライフサイクルにおけるCO2排出量を算定するツールを提供。Scope1、Scope2(※)のCO2排出量が実質ゼロで稼働する工場を、カーボンゼロプリント工場として認定するとともにカーボンニュートラル化した印刷物にカーボンニュートラルプリントマークの表示を認める。印刷物のライフサイクルにおけるCO2排出量を算定するツールを提供し、カーボンオフセットの証明書を発行予定。
※Scope1、Scope2の解説
・FSC森林認証
適切な森林管理が行われていることを認証する「森林管理の認証(FM認証)」と森林管理の認証を受けた森林からの木材を材料とした印刷用紙などの製品であることを認証する「加工・流通過程の管理の認証(CoC認証)」の2種類からなる認証制度。NPOであるFSC(Forest Stewardship CouncilR:森林管理協議会)が運営。
・植物油インキマーク
大豆油や亜麻仁油など植物に由来した油を使ったインキ製品であることを示すマーク。印刷インキ工業連合会が基準を定めている。
このように多種多様な選択肢があるなかで、自社なりのポリシーを持って環境対応に取り組むことが求められるだろう。
10月3日の印刷総合研究会「カーボンニュートラルに向けた印刷会社の環境対応」がその一助となればと考えている。
(研究調査部 花房 賢)