日本商工会議所・東京商工会議所「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」(2023年9月28日発表)によると、人手が「不足している」と回答した企業の割合が68.0%に達し、調査を開始した2015年以降で最高となった。
その対策としては「採用活動の強化」といった直接的な対応が最多だが、「社員の能力開発」などの間接的な取り組みも重要である。
深刻な中小企業の人手不足
同調査は本年7月から8月にかけ、全国の中小企業6,013社を対象に実施し、3,120社から回答を得ているが、人手不足を訴えた企業のうち57.2%は事業運営に支障が生じる「深刻」な状態で、廃業のおそれなど事業継続に不安を抱える「非常に深刻」も6.9%に上った。人手不足だと答えた割合が最も高かった業種は「介護・看護業」で86.0%。「建設業」が82.3%、「宿泊・飲食業」が79.4%で続いた。「製造業」は最も低い割合だがそれでも58.8%という数字だ。
人材確保の状況
人手不足の事業への影響については「現有人員でやりくりしている」との回答が約8割を占めている。人手不足への対策は「正社員の採用活動強化」が68.5%と最多となっているが、厚生労働省が公表した2023年8月の有効求人倍率は全国平均で1.29倍となり高いとはいえない。外国人労働者の受け入れ、女性の労働参加、高齢者の再雇用などもさらにテコ入れしないと事業運営が難しい。
しかし女性のキャリアアップ支援について「必要性を感じている」との回答が84.3%に達するものの、うち6割弱が「十分取り組めていない」と回答している。女性の労働参加率を高めるため、育児支援やワークシェアリングなどの制度を拡充し、女性が職場に復帰しやすい環境を整えなくてはならない。
外国人材については受け入れを「拡大すべき」「業種・地域を限って拡大すべき」の回答を合わせて67.8%に上る。外国人材を「既に受け入れている」企業は26.6%と前年調査より3.5ポイント増加している。また「今後受け入れる予定」の6.2%、「受け入れるか検討中」の24.1%を合わせると3割を超え、前年調査から7.7ポイント増加している。適切な労働条件と社会的保護を提供することが大切だが、この分野は順調に推移しているようだ。
人材確保に向けた取り組み
人材確保に向けた取り組みは「賃上げの実施、募集賃金の引上げ」の72.5%が最も多く、「ワークライフバランスの推進」の38.1%が続く。フレックスタイム・兼業・副業・テレワークなど「多様で柔軟な働き方の推進」は2割に満たない。これらをより重視すれば労働市場における企業の魅力は高まるだろう。
社員の能力開発
人手不足への対策で「業務プロセスの見直し」は33.2%、「社員の能力開発」は28.9%など、業務効率化や生産性向上の取り組みは約2、3割にとどまっている。人が取れないのであれば上記のような間接的な取り組みを増やしていく解決策もある。そして現有人員に対しても、新入社員に対しても教育は必須である。
JAGATでは「業務プロセスの見直し」や「社員の能力開発」などを目的としたセミナーを多数開催している。深刻な人手不足への一つの対策として活用していただきたい。中小企業の人手不足に対処するためには政府、産業界、教育機関、労働者との協力が不可欠であるが、JAGATとしても人手不足の持続的な解決を実現するために、教育事業に積極的に取り組んでいきたい。
(CS部 河原 啓太)
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