日々接する新聞記事やネットニュースを見ていると、ICT活用が進んでいることが分かるし、実際、我々が行う日常の実務でもいろいろなシーンで恩恵を受けている。印刷物制作においても、もはやデジタル技術なしではビジネスが成り立たないということは自明のことだ。
自分の周辺を見てもメールやウェブ、SNS、EC、クラウドサービス、PDF、さまざまアプリケーションなど、仕事でもプライベートでも当たり前のように使っているので、使いこなしているかは別として、もはやそれが当たり前で、誰もが使っているのではないかと思い込んでしまう。ところがそれはまさに思い込みなのだ。私事で、なおかつ一つの事例にすぎなくて恐縮なのだが、以下のような経験をした。
身内の法事・納骨を田舎で行うのだが、施主として諸々の手続きを行うために、関係各所に連絡するのだが、基本は電話であった。ところが法事の案内や墓石への彫刻原稿のやりとりとなるとファックスで送ってほしいという。Eメールで送れないか?と問うと、さすがにEメールアドレスはあって、それで送ることができた。
さらに案内文の校正をファックスで送るので確認してほしいという。ファックスでなく、PDFにしてメールで送ってほしいというと、「……?」という状態だ。
ウェブサイトもあったが、確認したいことがあってサイトを見ても、欲しい情報はないし、もちろんFQA的なものもなくて、活用的なサイトとはお世辞にもいえない。依頼している葬祭センターが小規模だからかというと、実際には某組合系でいくつかの葬祭センターがあるので、組織としては決して零細というわけではない。
この経験で思ったのは、地方でもその中心都市圏から離れたような場所の企業や組織では、ごく簡単なICT活用さえおぼつかないという現実があるということだ。彼らにとっては、その地域で営業する上では、現状で大きく不便を感じることがないから、ICT活用の必然性は低いのかもしれない。
しかし、やはり利便性や将来を見据えた業務効率化ということでは、ICTは活用していくべきものに間違いはないはずだ。まして、地方の活性化が叫ばれる中で、一企業や組織を超えて連携や情報発信が必要になるときに、ICTが活用できないことは致命的とも言える。
そこで、問題になるのはICT活用の人材や知見がない企業や組織に対してICT活用の旗を振ったところで、物事はなかなか前に進まないという現実だ。さらに問題なのはそもそもICT活用などを課題として意識すらできないところも、まだ存在するということだ。
こういった現実を考えたときに、実はDTPでデジタル対応を成し遂げ、ウェブやアプリ制作などまでビジネス領域を広げている印刷会社は、ICT活用が遅れている企業や組織のサポートをできる位置にいるのではないかということだ。もちろん、印刷会社の人材ですべて対応できることは難しいかもしれないが、初期のサポートを行い、ステップアップするときには印刷会社がリーダーシップをとってIT系パートナー会社と組んでソリューションビジネス、サポートビジネスを行うことは可能なのではないだろうか。それができれば、顧客や新しいビジネスの開拓につながることも夢でない。(JAGAT info編集部)
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