何気なく使われている単語、セミナー・研究会・カンファレンス。経験的に、無意識に理解している人は多いが、誤解も少なからずある。整理してうまく使い分けるようにしたい。
折込チラシに関する研究会に多くの参加者が集まる
6月5日、折込チラシに関する研究会を行った。講師は朝日オリコミの大谷良子氏、凸版印刷の山岸祥晃氏、サイバーエージェントの田中隆徳介氏、ヤフーの馬場理恵子氏の4氏。参加者は全国から50人超、3時間半を超える研究会にも関わらず最後までほとんど誰も帰らない熱気のまま終わった。講師の4氏は折込チラシの有用性を認めたうえで、折込チラシを起点としたエリアマーケティングのあり方について、それぞれの立場からWEB・位置情報・動画を絡めた費用対効果向上について論じた。
(1)セミナーとは
上述の文章では研究会と記述したが、(1)セミナーと(2)研究会、(3)カンファレンスはどのように違うのだろうか。まず、(1)セミナーである。これは、既に確立された分野について、そのエキスパートが受講者に教えるものである。内容は教育であり、話し手は先生、聞き手は生徒、といった関係性になる。受講の主たる目的は知識習得、スキルアップ、トレーニング。受講を通して生徒は当該分野に関する技能がレベルアップする。
(2)研究会とは
研究会は、まだ先行きが不確かな分野について検討する。当該分野の専門家・実務家が自分の経験・知見・事例・見方を発表、聞き手は当該分野の将来性や実現性、方向性を考える。不確かな分野だけに結論は明確ではないことも少なからずある。内容は示唆的な面も多く含み、それだけに有望分野の情報や事例をいち早く入手できる場合がある。終了後の質疑応答も活発なことが多い。話し手は第一人者、聞き手は参加者、といった関係性になる。参加の目的は情報収集、参加者自身の知見形成であり、研究会を通して当該分野に関する自分なりの考えを持つことが求められる。
(3)カンファレンスとは
カンファレンスは、先行きが不確かな分野について、先行的な複数の専門家・実務家・学識経験者が発表と議論を繰り広げ、聞き手も一緒に将来性や実現性、方向性を考える。話し手はたとえ主観的でも自分なりの考え方を述べることが求められ、話し手による議論を通じて未来を明らかにしようと試みる。登壇者は、話し手となるスピーカー複数名、聞き手役のモデレータ1名から成り、多くの参加者も議論に加わるような関係性で成り立つ。平行線のまま終了することもあるが、結論を出すことは目的ではない。議論の過程で現れるスピーカーの思考方法や本音を知り、参加全員が自分なりの考え方・方向感を持つことが目的である。
ワークショップや講演もあり、性質を知って使い分ける
セミナー・研究会・カンファレンスの違いを知って使い分けるようにしたい。セミナーに有望分野の実現可能性を求めても難しいし、研究会やカンファレンスに結論を期待するのも的外れである。JAGATは年間200回近いセミナーを行うほか、多くの有力社が入会するJAGAT印刷総合研究会も年間30回近く開催する。加えて、年1回のpageでは約40本のセミナーとカンファレンスを集中開催する。本稿では触れなかったが、状況や要請に応じてワークショップ(体験型セミナー)や講演も行う。必要に応じて使い分け、企業価値を高めるために有効に使いたい。
(研究調査部 藤井建人)