意識の高い学生を採用するには「新しいことへチャレンジできる環境」を与えることが必要である。その一つとして、若手社員と一緒に印刷ビジネスを考えることが重要である。
印刷企業は、印刷を提供するだけでは顧客ニーズに応えることは難しい。デザイン、クロスメディアなどの印刷+αの機能的な強化に留まらず、企業のプロモーション全般の支援による売り上げ向上や、バックオフィスなどの業務プロセス全体を受託して効率化やコスト削減に貢献するなど、印刷ビジネスが顧客へ寄与するべき領域は大きくなっている。これからの印刷企業が成長力を高めるには、若手にチャレンジする機会を与えながら新しいビジネスの方向性を考える必要がある。
■「新しいことへチャレンジできる環境」を求める若手人材
就職活動をする学生が企業を選択するポイントとして重視しているのは「安定性」と「高い給料」で、大企業志向が強い。その一方で、企業の規模を問わず「働きがい」「やりたい仕事ができる」「社風が合う」など、仕事の価値観を重視する学生も増えている。従って、大手企業の採用優位に変わりはないが、仕事の価値観という観点からみると、中小企業にも優秀な学生を獲得できるチャンスは十分にある。
ここで言う「働きがい」「やりたい仕事ができる」は、学生それぞれの価値観であるため画一的な解答は無いが、その1つに「新しいことへチャレンジできる環境」を求める学生がいる。起業まではいかなくても企業内で新ビジネス立ち上げに関わることで、ビジネスパーソンとしてのキャリアデザインをより良いものにすることができる。また企業も固定観念に囚われず新しい風を組織やビジネスに吹かせることができる人材を求めているため、「新しいことへチャレンジできる環境」を用意することは企業、学生双方にとってメリットが大きい。
JAGATは2017年10月~3月の半年間、「印刷ビジネス開発実践講座」を開催した。本講座は印刷企業の新しいビジネスについて徹底的に考え抜く講座であり、4社(1社2名)の印刷企業と新しいビジネスの構築を共にした。4社の参加者層の構成は以下である。
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A社:社長/最若手の営業社員
B社:営業部門の責任者/2年目の若手営業
C社:30代の若手デザイナー/入社1年目のデザイナー
D社:専務取締役/常務取締役
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テーマは「印刷ビジネス開発」なので管理職やリーダークラス以上が受講するイメージではあるが、D社を除く3社は若手の社員をこの講座の受講者として派遣した。
※D社も過去に本講座を受講した際に派遣したメンバーは最若手の営業パーソンである。
いずれの企業も若手にチャンスを与える風土があるようで、企業の心意気を感じた若手の受講者も高いモチベーションで講座に臨んでいた。結果として、若手の受講者は講座内容の多くを吸収し、印刷サービスの固定観念に囚われない形でビジネスを考えていたため、印刷ビジネスの新たな可能性を感じた。
また、派遣した企業の経営者からは、参加した若手のメンバーのスキルがアップしただけではなく、経営意識の向上や企業に対する忠誠心が強くなったように感じるとの話もいただいた。
「新しいことへチャレンジする環境」を用意することは、企業の新たなビジネスの可能性を広げるだけではなく、若手社員のモチベーション向上による離職防止にもつながる。その積み重ねの結果として、新しいことへチャレンジすることを望む意識の高い人材を採用できるチャンスが生まれるのである。
CS部 塚本直樹
[関連セミナー]
■印刷ビジネス開発実践講座2018
日 時:2018年10月~2019年2月(全7回)
https://www.jagat.or.jp/archives/37407