日本の季節と色と形(3)

掲載日:2024年1月11日

会員誌『JAGAT info』の表紙のデザインは、印刷文化を語る上で欠かせない、色と形の魅力をテーマにしている。

現在は「日本の形シリーズ」として、本誌の発行時期の歳時や風物をモチーフにしたイラストを主体に、和紙のテクスチャーや日本の伝統文様を組み合わせて、季節感と日本情緒が感じられるようにデザインしている。

参考:『JAGAT info』バックナンバー

最近のバックナンバーから、表紙に描かれたモチーフについて解説し、制作手法を紹介する。

2023年9月号 「秋茄子」

『JAGAT info』2023年9月号表紙

秋茄子というのは特定の品種の名前ではなく、9月以降に収穫される茄子のことをそう呼んでいるのである。
茄子は8月頃から株が老化して収穫量が減るのだが、いったん株を剪定して休ませると、再び成長して実を付けるようになる。
残暑厳しい間は冷たいあえ物で、涼しくなったら炒め物や煮物でと、季節を問わず重宝する食材である。

茄子を色鉛筆で描き、Photoshopで和紙のテクスチャー画像と合成した。本物の茄子の色は黒に近く、そのままではおいしそうに見えないので、青紫っぽくしてみた。

2023年10月号 「栗ごはん」

『JAGAT info』2023年10月号表紙

秋に一度は食べたい栗ごはん。自分で作る場合は栗の皮をむくのが一苦労だが、熱いお湯に浸すと多少はむきやすくなるという。うるち米に混ぜて炊けば栗ごはん、もち米に混ぜて蒸せば栗おこわができる。味付けは、新鮮な栗であれば、塩だけで十分である。

背景まで含めて全て色鉛筆で描き、スキャンした後、Photoshopで色調などを調整した。
イメージを掴むために、実際に栗ごはんを炊いて、我が家のお重に盛り付けて観察した。レシピサイトなどで見かける栗ごはんの写真は、丸い栗がご飯の上に美しく飾られているが、実際に作ると、栗が割れていたりごはん粒にまみれていたりで、見栄えはよくない。しかし、そこが逆においしそうに思えたので、あえて不恰好な感じを生かして描いた。

2023年11月号 「ブリ大根」

『JAGAT info』2023年11月号表紙

冬に旬を迎えるブリ。塩焼きや煮付けも良いのが、同じく旬の大根と一緒に煮ることで、ブリの脂と大根の甘みが合わさってよりおいしくいただける。さらに、作ってから一日置くと、煮汁が染み込んで味わい深く、また煮こごりも楽しめるようになる。

背景まで含めて全て色鉛筆で描き、スキャンした後、Photoshopで色調などを調整した。10月号に続き、実際にブリ大根を作って参考にしたが、なかなか濃い色味に仕上がらない。
色鉛筆で濃い目に描いたものの、スキャンしてみるとまだ色が薄く感じたので、Photoshopでさらに濃度を上げた。


これまでの「日本の形シリーズ」は植物をテーマにしたものが多かったが、この3カ月は、偶然であるが食べ物のテーマが続いた。「おいしそう」と思っていただければ幸いである。

今後も「日本の形シリーズ」は続く。植物、旬の食べ物のほか生き物や工芸品なども取り上げたいと思っている。多忙な日々を送る読者の方々が、本を手に取る一瞬にホッと一息ついていただければ幸いである。

(JAGAT 研究調査部/『JAGAT info』制作担当 石島 暁子)

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