「備えあれば憂いなし」の心構えで
 −『JAGAT info』6月号のご案内−

掲載日:2024年6月14日

 「デジタルデータの寿命は何年?」と質問されたら、皆さんはどのように答えるであろうか。結論から述べてしまうと、実質的には「データを記録している媒体の寿命次第」ということになるであろう。例えば国立国会図書館が公表している「デジタル資料の長期保存に関する基礎知識」によれば、「デジタルの記録媒体が誕生してからあまり時間がたっておらず、現時点では(編注:寿命に関して)確たることは言えない」「ただし、紙媒体と比べ短いということは確実」だとしている(「基礎知識1」参照)。また、総務省「震災関連デジタルアーカイブ構築・運用のためのガイドライン」においても、「記録媒体の寿命は、一般に、紙(中性紙)ならば適切に保管すれば100年以上は持つと考えて良いですが、電子媒体の場合は、数十年が限界とされています」と指摘している(「第4章 デジタルデータの長期保存・利用について」参照)。それに加えて、ハードとソフトの両面から再生機器の寿命についても考慮する必要が生じてくる。
 もちろん紙媒体と両方保存できればそれに越したことはないのであろうが、例えば撮影した写真の画像データなどは何らかの記録媒体にコピーするのが現実的であろうし、多くの会社でも多かれ少なかれ、そのようにしてデータを保存していることと思われる。私事で恐縮だが、執筆子は公私共に写真撮影を行う機会が多く、自宅の複数台のハードディスクドライブには自身でも把握できない枚数の画像データ(RAW+JPEGの同時記録)が保存されているはずであるが、撮影から10年以上が経過すると数千枚に1枚の割合でRAWデータが破損してしまっているように感じられる。対策としては、定期的にデータのバックアップを行っていくことが望ましいようだ。
 「備えあれば憂いなし」という言葉があるが、ビジネス用語として敷衍(ふえん)するのであれば「今、目の前にある状況を過信せずに、用心する」と読み替えることもできよう。デジタルデータは物質的な形状をまとっていないことから半永久的な存在であるかのように思ってしまいがちだが、記録媒体という「形あるもの」に保存する以上、データの破損や消失といったリスクを定期的に見直していくことは、あながち無意味であるとは言えまい。また、身の回りの清掃や整理整頓も、記録媒体の故障や不具合といったリスクを少しでも低減するための活動として位置付けることができる。「未来志向」というのはただ前を見るだけでなく、現在の状況をしっかりと見つめ直して評価していくことと両輪の関係にあるのではないだろうか。

 

『JAGAT info』2024年6月号のご案内

◯特集
 page2024開催報告
 未来を見据えた異業種共創と新事業開発

 近年、印刷会社は新たなビジネスチャンスを見つけて、付加価値を創造していくことが求められている。その際にキーワードとなるのが「異業種共創」と「新事業開発」だ。異なる分野の企業と連携することを通じて
新たな価値を創造していくとともに、印刷市場での需要も獲得していく戦略だといえる。
 特集では、オンラインセミナー「未来を見据えた異業種共創と新事業開発」の講演要旨を収録する。印刷業界の現状と将来を見据えつつ、DXへの取り組みや成長のシナリオ、思考のフレームワークなどについて論じ、これからの印刷ビジネスのヒントを探る。

◯特別企画
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 三越350年の歴史が物語る紙の価値

 三越は2023年に創業350年を迎えた。その歴史の中では営業革新や挑戦を何度も重ねており、とりわけメディアとしての紙を有効に活用してきたことも特長であるといえよう。
 特別企画では、ミニセミナー「三越350年の歴史が物語る紙の価値」の講演要旨を収録する。これまでの歩みを振り返りつつ、紙媒体の価値を生かした営業活動を行うためのヒントを考える。

(『JAGAT info』編集部)

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