生成AIの導入率は20%強、導入意欲も高い

掲載日:2024年7月2日

「JAGAT印刷産業経営動向調査」より新技術、サービスの導入状況、満足度、導入意向を紹介する。

JAGATが毎年、会員企業を対象に実施している「印刷産業経営動向調査」の2023年度の調査結果から新技術/サービス/システムの導入状況、満足度、今後の導入意向についての結果を紹介する。本調査回答企業の平均従業員規模は133名、1社当たりの平均売上高は29億円であり、中堅クラスの印刷会社が中心である。
新技術、サービスの対象は以下に示す18項目である。経年変化を追いかけることを重視しつつ、状況の変化にあわせて少しずつ項目の入れ替えを行っている。今年度は生成AI(画像系)と生成AI(テキスト系)の2項目を追加している。

図1.新技術サービスの設問項目

設問内容としては、(1)現在導入しているかどうか、(2)導入している場合の満足度、(3)今後3年以内に導入予定があるかどうかの3つである。満足度については、A:大変満足、B:やや満足、C:普通、D:やや不満、E:非常に不満の5段階評価で回答してもらい、A:5点、B:2点、C:0点、D:-2点、E:-5点という重みづけで点数換算して満足度を数値化している。

図2.導入率の高い順

図2は現在導入が多い順に並べたものである。第1位は7年連続でバリアブルデータ印刷であり、導入率は69.5%(前年 69.2%)であった。第2位は品質検査装置で66.3%(前年 68.1%)、第3位は自動面付の53.7%(前年51.1%)となっている。前年からの変化では、前年第3位の動画制作と第4位の自動面付が入れ替わった。
活用状況が注目されるAI関係では、生成AI(画像系)が24.2%で11位、生成AI(テキスト系)が22.1%で12位であった。活用レベルは各社異なるであろうが積極性が感じられる。
前年より導入が進んでいるのは、第8位のプロセスレスプレート(11.3%増)、第9位の資材料発注の電子化(7.1%増)、第5位の自動組版(6.9%増)となっている。

図3.導入率の経年変化

図3は、2018年からの導入率の経年変化で上昇傾向にある項目をピックアップしたものである。最も伸び率が高いのが資材料発注の電子化で導入率2.0%から28.4%へ大幅増となっている。後述のオンライン校正とあわせてコロナ禍を経てやり方がデジタルにシフトした代表例といえる。次に伸び率が高いのが営業支援ツール(CRM/SFAなど)で導入率は12.1%から37.9%と約3倍増、続いてプロセスレスプレートが15.2%から36.8%へ約2.4倍増、オンライン校正が23.2%から44.2%へ約1.9倍増、品質検査装置が47.5%から66.3%で約1.4倍増となっている。新しい設備を導入するときには品質検査装置をつけることがスタンダードになりつつある。

図4.今後3年以内に導入予定の高い順

図4は今後3年以内に導入を予定しているとの回答が多い順に並べたものである。第1位は生成AI(画像系)で25.3%、第2位は資材料発注の電子化(脱FAX)で24.2%(前年は1位)、第3位が生成AI(テキスト系)で22.1%であった。生成AIへの旺盛な導入意欲がみられる。前年より上昇している上位3つの項目が第7位スマホ/タブレット対応アプリ制作(前年6.4%から10.5%へ4.1ポイント増)、第6位オンライン校正(前年8.5%から11.6%へ3.1ポイント増)、第13位カッティングプロッター(前年3.2%から6.3%へ3.1ポイント増)であった。
一方で、導入意欲が減退しているのが、第9位プロセスレスレポート(前年14.9%から8.4%へ▲6.5ポイント)、最下位JDFワークフロー(前年7.5%から2.1%へ▲5.4ポイント)、第4位RPA(前年18.1%から13.7%へ▲4.4ポイント)であった。JDFについては、メーカー間や工程間での機器連携の際には標準的に利用されているが、ブラックボックス化してユーザーが意識するものではなくなってきている。

図5.満足度の高い順

図5は前述の重みづけで満足度を数値化し、高い順に並べたものである。0ポイントが中心(可もなく不可もなく)となる。満足度の点数が最も高かったのはプロセスレスプレートで2.31ポイント。前年に引き続いて第1位であった。導入が進みつつ満足度も高いという状況が続いている。第2位は品質検査装置で1.75ポイント。こちらも導入率の上昇と高満足度の傾向にある。第3位はデジタル加飾で1.67ポイントであった。導入社数は少ないものの高い満足度となった。
満足度が上昇したのが、第7位のカッティングプロッターで前年の0.32ポイントから0.90ポイントとなった。逆に大きく減少したのが第15位のスマホ/タブレット対応アプリ制作(前年0.65ポイントから▲0.06ポイントへ)と第13位のRPA(前年0.81ポイントから0.15ポイントへ)である。デジタル施策については評価の変動が大きい傾向にある。
生成AIについては画像系が0.48ポイント(第9位)、テキスト系が0.29ポイント(第12位)であった。導入率はほぼ同じであったが、評価については画像系が上回った。

「JAGAT印刷産業経営動向調査」 結果をまとめた報告書は、10月に最新版が刊行予定です。

(研究調査部 花房 賢)