2023年度の「JAGAT印刷産業経営動向調査」によると非印刷事業の拡大志向が明確にみられた。
JAGATが毎年、会員企業を対象に実施している「印刷産業経営動向調査」では、今年度調査から印刷事業と非印刷事業の現在と5年後の売上構成比の変化予測を問うている。
図1は、回答企業全体の平均値である。今期は印刷事業の売上構成比が85.7%であるものが5年後には73.8%に減少する、言い換えると今期の非印刷事業の売上が14.3%であるが、5年後にはほぼ倍増の26.2%にまで引き上げるという結果となっている。非印刷事業を伸ばしていくという明確な意志が感じられる。
なお、今期印刷事業の売上が100%であると回答した企業は25.8%であり、90%以上100%未満の企業は35.1%であった。両者を合わせると約6割の回答企業が全売上の90%以上が印刷事業と回答している。
5年後に印刷事業の売上が100%であるだろうと回答した企業は12.4%、90%以上100%未満の企業は17.5%であった。両者とも今期の回答結果からは半減している。
図2は設備投資に限らない投資分野を問うた結果である。「人材(採用)」が1位、「人材(教育)」が3位であった。「脱印刷」に向けては、人材の確保がポイントとなるし、教育には配置転換に向けたリスキリングという意味合いもあるだろう。人材重視・教育重視の傾向が明確に表れた。
非印刷事業の内容について回答結果から紹介すると、イベント企画・運営(事務局代行)、市場調査・マーケティングサポート、広告代理店業務、コールセンター、フォトビジネス(BtoC)、封入・封緘、梱包・仕分け、発送代行、フルフィルメント、バリアブル印字とそれに伴う情報処理、動画撮影・制作、POP・店頭什器制作、サインディスプレイ、屋外広告、ノベルティグッズ、ステーショナリー制作などが挙げられる。
「脱印刷」といってもまったく印刷と無関係の事業に取り組んでいるケースは少ない。印刷周辺業務の取り込みやメディアのデジタル化への対応を図っていくという方向性とプロダクトの提供にとどまらず関連業務全般を請け負う(BPO)という二つの方向性がみられる。
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(研究教育部 花房 賢)